当然ながら、家は誰でも好き勝手に建てられるものではありません。
建築するにあたっては、さまざまな法律がついて回ります。
ここでは、家を建てる前に、もっといえばプランニングをする前に
施主が確認するべき法律についてお伝えします。
目次
家を建てたあとにトラブルになりやすい法律は?
家を建てる場合、まず何よりも遵守しなければいけないのは、
都市計画法と建築基準法でしょう。
これは住宅メーカー、ハウスメーカー、工務店、設計事務所と
建築に関わるすべての事業者が守らなければいけない基本的な法律です。
隣人とのトラブルに係る民法
しかし、家を建てたあとにトラブルになりやすいのは、
都市計画法と建築基準法などの規制的な法律よりも
実は民法に関係したものなのです。
たとえば、隣接するお宅との境界線や、建設時の工事に関する苦情など、
人がかかわるトラブルが多い字の実情です。
大手ハウスメーカー営業マン時代のエピソード
以前私が担当させていただいた東京都目黒区のお客様に、
こんなトラブルが起こりました。
そのお客様は35坪の土地に3階建ての家を建て替えることを希望されていました。
家の建て替えのプランが決まり、
元の家を解体することになったので、
私とお客様とでご近所の家にご挨拶まわりに行きました。
その後、家は無事に建ったのですが、
意外なところでお隣の方とトラブルになってしまいました。
その家は、建築基準法上の高さ規制や建蔽率、
日照権などの基本的な基準はクリアしていました。
しかし、住宅の空き寸法に少し問題があったのです。
空き寸法とは、隣の家の境界線から自宅の外壁までの距離のことで、
民法上では50cm以上空けなければならないと定められています。
しかし、バルコニーの端がお隣の家のほうに少し伸びていたため、
その部分からの距離が50cmよりも短くなっていました。
家の外壁から境界線までは十分に離れていたとはいえ、
バルコニーがお隣の家に近すぎたために、トラブルになってしまったわけです。
ご挨拶まわりに行った際にその点も細かくご説明しておけば、
ご意見を伺って事前に修正することもできたかと思うと、非常に悔やまれます。
当時の私にとって、これは盲点でした。
最終的にはお互いに合意ができたから良かったものの、
場合によっては裁判沙汰にもなりかねないことですから、
ご近所の方には事前に注文住宅の建築内容をよくご説明しておくことをおすすめします。
家の外構を考えるときにも配慮が必要
空き寸法と同様に境界線が絡んだ例でいうと、
自宅とお隣の間にフェンスを建てる際にも、
トラブルが起きないよう注意が必要です。
トラブルを防ぐには「自費」で「自分の敷地」に建てること
土地の境界線上にフェンスを建てた場合、それは共通の財産になりますが、
デザイン選びや工事費用の負担、
その後の管理のことまで考えると、何かと気をもむことも多いでしょう。
それはお隣との関係が親しい間がらでなければなおさらだと思いますが、
親しい間がらであってもそれなりに配慮が必要です。
このような場合は、
自分の家の敷地内(境界線の内側)に自費でフェンスを建ててしまえば、
ほとんどの問題を解決できます。
ただ、その場合もお隣に対して、
あらかじめどんなフェンスを建てるのかをご説明するほうがよいかもしれません。
フェンスのカタログなどをお持ちして、
実際に見ていただくのも効果的です。
建てたフェンスはお隣からも見えるわけですから、
あまりにも派手な色や奇抜なデザインだと、
不快な思いをさせてしまうこともありえます。
必要以上に高さのあるフェンスはNG
また、2m以上のフェンスは建造物扱いになる点も注意が必要でしょう。
もっとも、あまりにも高いフェンスは、
相手を拒絶しているように捉えられてしまうこともありますので、
やはり事前に説明をしておくほうが話はスムーズに運ぶと思います。
こういった空き寸法や境界線の問題のほかにも、
住宅建築においては、排煙規制などが原因でトラブルが起こることもあります。
民法のトラブルを完璧に防ぐのは難しい
民法のトラブルは個人的な感情が絡むこともあり、
必ずしも杓子定規には対処できません。
家を建築する場合、都市計画法や建築基準法よりもトラブルが多くなる理由も、
なんとなくご理解いただけるのではないでしょうか。
とはいえ、そもそも民法は人と人とが住みやすくするための法律です。
あまり難しく考えず「仲良く暮らすための知恵」程度に捉えておけばいいのではないかと思います。