パブリックスペースであるリビングとダイニングは、
家族が集まり団らんのひとときを過ごす場所です。
特にリビングは家の中心となる大切な場所ということもあり、
注文住宅の打ち合わせの際にも、お客様のご要望が出やすい部屋になっています。
目次
リビングに求めるのは団らんだけではない場合もある
お客様によっては、リビングに家族の団らん以外の要素も求める場合があります。
一例として、私が担当したお客様のなかから、
リビングに対して良く覚えているエピソードをご紹介しましょう。
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注文住宅を建てる場合、複数の業者を比較することはとても重要です。注文住宅は一点もの、オーダーメイドの商品です。定価という概念はほとんどありません。つまり、「自分の条件で家を建てたらいくらになるのか?」というのは、他の住宅メーカーと比較して見積もりを取らないとわかりません。必ず見積もりを比較して取得しないと、値段を知ることは困難です。知らずに決定を下すことは何も持たずに狩りにでるようなものです。
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事例で見る「家族が集まるリビング」プラン
そのお客様は都内の大学病院にお勤めの外科医の先生で、
奥様はキャリアウーマンです。
日中はお二人ともバリバリ働いていらっしゃいました。
そのご夫婦がご両親から相続した土地に、注文住宅を建てたいとのことでご相談を受けました。
子供2人、共働きの夫婦、珍しい形の家づくり
家づくりは家族全員に関わることですから、
通常は打ち合わせにご夫婦でお見えになられるか、
場合によってはお子様がご一緒されます。
ところがこのお客様との打ち合わせは、私が大学病院に行って、
旦那様と2人でプランを詰めていきました。
当然、奥様はその場にはいらっしゃいませんし、
小学校高学年と高校生の、2人の息子さんもほとんど参加されませんでした。
これはやや珍しいケースで、ここまでの経緯を聞くと
ちょっと冷たいご家族のように思えてしまうかもしれません。
しかし、そういうわけでもないのです。
難しいご要望「家族の気配とプライバシーと個人の独立性」
旦那様は家づくりについては細かく要望を出さず、
ただ「家族の気配が感じられつつ、プライバシーが守られ、個人の独立性が保たれた間取り」
を一貫して希望されていました。
これは一見簡単なようで、実はご提案するのが非常に難しい注文だと感じました。
なぜなら、解釈の仕方によって、
プランの方向性がさまざまに変わってしまうからです。
とにかく何度も「打ち合わせ」
私は何度も打ち合わせを行って、
お客様が望んでいる間取りをなんとか形にしようと努力しました。
しかし、プランを提出するたびに旦那様は唸るばかりで、
なかなかOKをいただけません。
お客様は職業柄お忙しく、また無口な方でしたので、
提出した案に対して具体的な改善案を提示していただくことも難しかったのです。
そのため、プランはしばらくの間迷走してしまいました。
相見積もりで完敗した他社の秀逸プラン
あまりにもプランが形にならないので、
将来的にはこのご依頼をお断りする可能性も頭の片隅に置きつつ、
どうしようかと悩んでいたところ、お客様からご連絡が来ました。
実は旦那様は、大手ハウスメーカーの積水ハウスにも注文住宅の合い見積もりを取っていて、
そちらから上がってきたプランが大変気に入ったというのです。
私が唸った他社営業マンのプランニング
早速そのプランを見せていただいたところ、
あまりにも完璧かつ見事な内容に、私は目から鱗が落ちてしまいました。
それは廊下がほとんどなく、吹き抜けになったリビングを中心とした間取りで、
回り廊下に沿って作られた個室が見えるようになっているプランでした。
しかも個室の出入口はドアではなく引き戸になっていたのです。
これなら確かにリビングにいながら家族の気配が感じられ、
個室で独立性とプライバシーが保たれています。
ラウンジとしての機能を果たすリビング
私はその時にようやく、お客様は家族のだんらんを楽しむ場だけではなく、
ある種ラウンジとしての機能をリビングに求めていたのだとわかりました。
私はこの見事なプランには完敗したと思い、
お客様には積水ハウスで注文住宅を建てていただくようにおすすめしました。
ところがお客様は、あきらめずに何度もプランを提出してきた私にぜひ作ってほしいのだとおっしゃって、
そのプランをもとに契約をしてくださいました。
この決定には正直なところ驚きましたが、私はお客様の心意気に感謝しつつ、
見事なプランを提出した積水ハウスの営業マンを尊敬しています。
できればお会いして御礼を述べたかったのですが、
その機会をいただくことはできませんでした。
家の中で最も広くなるリビングをどう作るか
上で挙げた例のように、リビングに団らんを求めるかラウンジ的な機能を求めるかで、
間取りが大きく変わることをご理解いただけたかと思います。
ひと昔前ならリビングは家族団らんの場であり客間でした。
ベビーブームの頃は子供も多く、
リビングは子供たちが遊ぶ場所にもなっていましたが、
子供の出生率が低くなってからは、必ずしもリビングだけが団らんの場ではなくなったといえるでしょう。
また、お子様が成長されれば、お互いの生活サイクルも変わりますので、
リビングの果たす役割も変わります。
事例から見る「300年保つ家」に採用した飽きのこないリビングデザイン
ここでもうひとつ、リビングの作り方の一例として、
私が担当した東京都世田谷区のお客様のケースをご紹介しましょう。
そのお客様はお年を召したご夫婦で、田舎の土地を売って得た資金を元に、
当時お住まいだった築200年以上のかやぶきの家を、
注文建築で建て替えたいというご依頼でした。
古民家の雰囲気を引き継ぐ和洋折衷の家づくり
私が「どんな家をご希望ですか?」とお客様に聞くと
「300年間は保つ家にしてほしい」とおっしゃいました。
そのときに問題になったのが、リビングをどう作り変えるかでした。
元の家はかやぶき屋根の古い家でしたので、基本的に土間以外は畳の和室しかありません。
これをすべて洋室に変えてしまうのでは、
元の家との違いが大きすぎて違和感を覚えるでしょう。
「永遠の美」を目指しリビングをデザイン
検討を重ねた結果、玄関から入ってすぐの場所に
フローリングの大きなリビングを作り、その横に縁側を配置。
そこから奥に行った場所に8畳・6畳のほか
いくつかの和室と床の間を配置して、モダンで純和風の家を作りました。
「300年保つ家」というご要望に対しては、
永遠の美をテーマにコンセプトを練りました。
いつも時代も美しいシンメトリーのデザイン
まず必要なのは、長い年月を経ても陳腐化しないデザインです。
具体的にいうと、建物を正面から見たときに、
屋根の形や窓の配置が左右対称(シンメトリー)になったデザインを採用しました。
屋根もシンメトリーな切妻です。
実はアーリーアメリカンの家にはシンメトリーのデザインが多く、
日本の家屋には少ないのです。
そのため、300年後も保つという壮大なテーマで家を考えると、
必ずしも日本家屋のデザインを踏襲する必要はないと考えました。
耐久性も重視したプランニング
また、耐久性という面では、建物にどこか出っ張った部分があると
防水性能が弱くなったときにそこから水が漏れやすくなりますし、
腐食も始まります。
そのため、バルコニーや出窓といった凹凸のない、
長方形の家にしました。
この例を見ても、リビングのプランには
さまざまなアプローチがあることがおわかりいただけたかと思います。
「わが家に独立したリビングが必要か」ライフスタイルを振り返ろう
まずは、リビングでの暮らしをとおして、
どんなライフスタイルを実現したいのかを見直してみてください。
その結果、ご自分の生活に本当に必要なのはリビング単体ではなく、
実はリビングダイニングだったという可能性もあります。
その場合はリビングダイニングの項目を別に用意してありますので、そちらも合わせてご覧ください。
▼こちらの記事で「リビングだインニング」について記載しています。▼
いずれにしても、リビングは家の間取りのなかでも最大のスペースを取る部屋です。
広いということは冷暖房の効率が悪くなるということでもあります。
なるべく自然の力を借りて部屋の温度調整ができるよう、
リビングの風通しや陽当たりを良くすることを考えましょう。
南向きの窓をできるだけ大きくする、
開け閉めできる欄間やハイサイドウインドウを設けるなど、
明るく風通しの良いリビング作りが大切です。