大手ハウスメーカー元営業マンがお伝えする家づくり成功の法則

家を建てる費用や見積り

上棟式は職人との交流を深める意味でも大事な儀式

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注文住宅建築の際の、上棟式は地鎮祭同様に、新築の建物を建てる際に行われる祭祀で、
上棟まで工程が無事に進んだこと、そして今後も安全に工事が進められることを祈願します。

木造の注文住宅の場合は、基礎を打った後に、柱立てを行ってそこに梁を繋げ、
そのあとに棟木を上げます。これが上棟式と言われる所以です。

ただ、同じ注文住宅でも依頼するハウスメーカーごとに、
独自の工法で建物を建てるため、上棟式を行うタイミングがそれぞれ違ってきます

たとえば、鉄骨系、木造系、2×4(ツーバイフォー)のパネル系、
コンクリート系といくつかの工法がありますが、
これらは上棟のタイミングがそれぞれ違います。

2×4の場合なら、1階と2階の屋根まで作ったあとに上棟式を行うのです。

そもそも上棟式は平安時代から行われていると言われていますが、
現在は地鎮祭などと比べると式の内容が大幅に簡略化されています

参考までに本来の上棟式簡略化された上棟式の2つの手順を挙げておきますが、
本来の上棟式のほうは地鎮祭とほぼ同じ内容なので、比較してみてください。

【本来の上棟式の手順】

  1. 1)着座(ちゃくざ)
  2. 2)修祓(しゅうばつ)
  3. 3)降神(こうしん)の儀
  4. 4)献饌(けんせん)の儀
  5. 5)大祓詩奉唱(おおはらいしほうしょう)
  6. 6)祝詞奉唱(のりとそうじょう)
  7. 7)清祓い(きよはらい)
  8. 8)槌打(つちうち) の儀
  9. 9)玉串奉典(たまぐしほうてん)
  10. 10)撤饌(てっせん)の儀
  11. 11)昇神(しょうしん)の儀
  12. 12)退下(たいげ)

【簡略化された上棟式の主な手順】

    1. 1)施工会社の棟梁が住宅の棟木の部分まで上がり、

魔除けの効果があるとされる幣串(へいぐし)を棟に縛り付ける。昔は破魔矢も使われていたことがあります。

  1. 2)簡単な祭壇を作り、そこにお供え物(神饌)を捧げます。
  2. 3)建物の四方の柱に米や酒、塩などをまいて清めます
  3. 4)施主、棟梁、工事関係者などのあいさつ
  4. 5)施主が職人へご祝儀を渡す

上記の略式はあくまでも一例で、最後に餅を蒔いてふるまうこともあれば、
餅と一緒にお金やお菓子を蒔くこともあります。

また、地方によって式の手順や内容が多少異なります

いずれにしろ、上棟式ができる段階まで作業が進むと、
建物の骨組みが出来るとともに部屋の大きさなどもわかるようになり、
施主にとっては自分の家のイメージがよりつかみやすいものになるでしょう。

上棟式は大工を始めとした職人にとっても工程上の1つの区切りになります。

これを読んでいる方のなかには「上棟式自体が必要なのだろうか」
と考えている方もいらっしゃるかもしれません。

ただ、20年近くハウスメーカーの営業マンをやっていた私の経験からすると、
上棟式はやっておいたほうが良いと言い切れます

上棟式も地震歳も本来祭祀ではあるものの、それはきっかけの1つでもあって、
主な目的は施主と大工を始めとした職人たちとのコミュニケーションにあると考えています。

もちろん神様にお願いをすることで、得られる安心感というものもあるでしょう。

上棟式もただ飲み食いするのではなくて、たとえば骨組みが出来上がった家を見ながら
「作り付けの棚が欲しいと思っているのだけれど」
と職人たちに相談を持ち掛けてみれば、そこから具体的な案が聞けるでしょうし、
場合によってはもっと良いアイデアを提示してもらえるかもしれません。

上棟式の後も大工とのコミュニケーションを大事に

上棟式を通じて職人たちとお話しをするきっかけができたら、
その後も作業の邪魔をしない程度にコミュニケーションを図ることは大事です。

家を作るのは機械ではなくあくまでも人間ですので、
施主と職人のコミュニケーションがうまくいっていれば、
職人も「あの施主のために頑張ろう」という気持ちにもなってくれます。

その積み重ねが良い家を作るわけです。

特に大工が一番活躍できる木造軸組工法(在来工法)で家を建てる場合は、
大工のモチベーションによって建物の完成度は変わってきます

職人に好かれる施主はこんな人物

注文住宅を建てる場合、施主はお金を払ってくださるお客様ですから、
職人からすれば好き嫌いの感情はないはずです。

それでも施主の性格によっては、職人たちから非常に好かれることがあります。

私がハウスメーカーの営業マン時代に担当した東京都目黒区のお客様のケースでは、
こんなことがありました。

そのお客様は、現場の職人にとても好かれた方でした。

職人の間で「あの施主はいい人だな」
あの施主のために何かしてあげたい
という感想が自然に漏れ聞こえてくるような方だったのです。

そこまで好かれた理由を改めて考えてみると、
施主の細やかな心配りと感謝の気持ちを示してくれたことにあったと思います

施主はお歳をめした男性で、職人によっては孫と祖父のような年齢差がありました。

その方は現場によく顔を出される方で、現場に貼り紙をしては
「大工さん、今日もありがとう」と感謝の言葉を書いていらっしゃいました。

そのほか、玄関のところに

「家を建てるなら〇〇〇ホームが一番良いです。
私がおすすめします。担当営業マンは〇〇さんです。
こちらまでご連絡ください→(連絡先)。施主より」

というような貼り紙までしてくださっていて、私はそれを見て感激してしまいました。

このようにさまざまな形で施主から感謝の言葉をいただければ、
現場で働く者は皆、嬉しい気持ちになりますし、仕事の励みにもなります

その結果、いつも以上に良い家を建ててあげたいという気持ちになるのです。

こう書くと、施主がここまでしないと職人は一生懸命働かないと思われるかもしれませんが、
もちろんそんなことはありません。

どの施主の注文住宅でもプロとして一生懸命作ります。

ただ、自分の仕事に対して感謝をされるのは職種を問わず嬉しいものですし、
その結果より仕事に力が入るということなのです。

この目黒区のお客様からは、職人の仕事ぶりを評価していただけたためか、
その後もご縁があって、新たに2棟分の住宅に関わらせていただきました。

GIVE&TAKEならぬ、GIVE&GIVEの精神で仕事に取り組んでいれば、
それはお客様にも伝わりますし、成果物にもきちんと表れるものなのです。

職人の休憩時間を施主側で決めてもよいかどうか

現場で一生懸命働く職人をねぎらいたいという気持ちで、
施主が午前10時・午後3時にお菓子やお茶を提供することは昔からあります。

しかし、職人というのは仕事に集中できているときは、
その集中力を維持したまま仕事を続けたいと思うものなのです

実際、高い集中力を発揮しているときの作業のほうが、
仕事の効率も仕上がりも良いものになることがほとんどです。

この集中できる時間は、時計どおりに決められているわけではありませんので、
調子が良いときは食事や休憩の時間を多少変えても作業の時間を優先することがあります。

したがって、午後3時になったからとお菓子を提供して休んでもらおうと思っても、
職人の集中力を削ぐことにもなり兼ねないのです。

そのためか、最近はあらかじめ施主からのお菓子・お茶の差し入れをお断りしている現場もあります

それらが必要かどうかはあらかじめ確認しておくと良いでしょう。

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