注文住宅の設計・施工を依頼した会社(ハウスメーカー、工務店、設計事務所)から
契約書や全体的な見積書、
工事の見積書が上がってきたら、中身をじっくりと精査しましょう。
しかし、精査といっても契約書や見積書には普段は
見慣れない専門的な用語も書かれていて、
一般の方には内容がなかなかわかりにくいのが実情です。
依頼した先がハウスメーカーであれば、
担当の営業マンにわからない点を1つずつ解説してもらってもよいと思いますが、
ご自身でもある程度理解しているほうが打ち合わせもスムーズに進みますし、
費用が何に使われるのかをより強く実感できると思います。
この記事では、注文住宅を建てる前に、
契約書や見積書、工事見積書をチェックするときのポイントについて解説しています。
良い家を建てるためには、住宅会社との意思疎通が大切です。
見積書や契約書を通して住宅会社と意思疎通ができているか確認し、
理想の家づくりができるよう、しっかりチェックポイントをおさえておきましょう。
注文住宅の契約書と見積もりの内容を確認するときのポイント
注文住宅の間取りが決まり、見積もりの内容にも問題がなければ、
設計・施工会社と本契約(正式に契約)を結びます。
その際に会社側から工事請負契約書をはじめとした4種類の契約書が提出されますが、
これも見積書と同様に専門用語がちりばめられていて、内容がなかなかわかりづらいと思います。
しかも書かれている内容自体が多く、すべてを確認するのにも時間がかかることでしょう。
生活の空き時間を使って書かれている用語を調べながら読み進めても、
半日以上かかってしまうかもしれません。
そこで、各種契約書のどんなところに注意して読み進めればよいのかを、
ポイントを絞ってご紹介しましょう。
なお、契約書の書式は会社ごとに大きく異なるため、
よく記述されている内容を中心にご紹介します。
工事請負契約書
注文住宅の工事請負契約書には、工事の発注者や請負者の名前のほか、
工事期間、請け負った代金とその支払い方法などが書かれています。
4つの書類のなかでは書かれている内容も少なめで、一番シンプルです。
下で挙げたチェックポイントに照らしてみて、
書類の内容に問題がなければ発注者と請負者がそれぞれ署名・捺印したうえで印紙を貼ります。
書類には代金についても書かれていて、
4回程度に分けた支払い方法が選ばれることがほとんどです。
代金の支払いタイミングと割合
支払いタイミングと割合は、契約時に代金の10%、
着工時に30%、上棟時に30%、建物の引き渡し時に30%というのが一般的で、
ローンで支払う場合ならつなぎ融資から同じタイミングで支払われます。
- 工期について着手、完成日が明記されているか
- 請け負った代金(支払う代金)の金額に間違いはないか
- 代金の支払い方法について、支払いのタイミングと回数、金額に間違いはないか
- 契約の証として、発注者、請負者用に契約書を2通作成しているかどうか
工事請負契約書約款
注文住宅の工事請負契約書と工事請負契約書約款は、
言葉としては似ていますが内容は別のものです。
工事請負契約書約款は、工事をするにあたっての決め事、約束がずらっと書かれている書類です。
契約書のなかで、一番複雑なのがこの約款でしょう。
しかし、書かれている内容はどれも重要です。
まずは工事内容に不具合や欠陥などがあった場合に、
どのような対応と保証をしてくれるのかを明記した「瑕疵担保」について内容を確認しましょう。
また、工事の遅れによって建物の引き渡し日が
後ろ倒しになってしまった場合の損害金の項目も確認しておいてください。
さらに、工事中に発生した台風や大雨による水害、付近で起こった火事からの延焼など、
発注者、請負者ともにどうすることもできない、
不可抗力によって損害が発生した場合の対応についても確認しておきましょう。
このような不可抗力に対し、
注文住宅の場合は発注者と受注者が協議したうえで対応を決めることがほとんどです。
請負者はだいたい工事用の保険に入っていますので、通常はそこから補償されます。
あらかじめ施工者側が保険に加入しているかどうかも聞いておいたほうが良いでしょう。
それから「念のため」にはなりますが、
工事を途中で中止しなければならなくなった場合の対応についても見ておきましょう。
通常は工事の途中で注文住宅の工事請負契約が破棄されることはまずありません。
契約内容に虚偽があった、工事内容がずさん、工期が大幅に遅れている、
発注者と請負者の間に取り返しのつかない感情のもつれが起こったなど、
契約が破棄に至りそうな理由はいくつか考えられます。
しかし、そこまで致命的なことはなかなか起こらないものです。
ただ、トラブルが起こる可能性はゼロではないので、
万が一に備えて内容を確認しておきましょう。
同じくトラブルでいうと、
工事中に2階から物を落として通行人を負傷させた場合などについても、
約款で触れられていないか確認しておくことをおすすめします。
- 建物の引き渡し後に欠陥が見つかった場合の瑕疵担保が明記されているか
- 建物の引き渡しの遅れにともなう遅延損害金の有無と金額
- 天災や火災の延焼などの不可抗力によって発生した損害の補償方法
- 工事が変更、中止された場合の対応内容(紛争の解決方法)
- 工事によって第3者を負傷させた場合の対応内容
注文住宅の見積書
注文住宅の見積書の各項目の内容については、
別の記事でも詳細に触れていますのでそちらをご覧ください。
契約書についてくる見積書は、寸法や数量、単価などを改めて確認しておきましょう。
この段階で「~一式」という記載がある金額の高い項目に関しては、
内容についてその詳細を説明してもらうことをおすすめします。
- 見積もりの総額
- 見積書の提出までに変更、追加した部分がある場合はその内容と金額
- 「~一式」という記述でひとくくりになった項目がないか
設計図書(せっけいとしょ)
住宅を建てるのに必要な図面や仕様書を、まとめて設計図書(せっけいとしょ)といいます。
設計図書にはどんな書類があるのかというと、
たとえば建物の構造を記した構造計算書、建物を東西南北の各方位から見た立面図(りつめんず)、
敷地の形と敷地に接する道の幅・敷地内における建物の位置などを記した配置図など、
さまざまな視点・用途で切り取った専門的な書類がほとんどです。
ただ、書かれている内容には図も多いですから、
難しい名前に反して見やすい書類かもしれません。
- 必要な図面と書類は十分そろっているかどうか
- 事前の打ち合わせで変更を行った場合は、それが図面に反映されているか
契約時に渡される書類は数も多く、内容も専門的です。
これらの内容全部をお客様が施工会社と同じ視点・知識で
細かくチェックすることは不可能でしょう。
なかでも、契約書は確認する書類と
そこに書かれている約款(やっかん)の数も多いですから、
ただ読んで内容を確認するだけだと、どこまで見たか、
また読んでいるうちに浮かんだ疑問点は何だったのか、などについて忘れてしまいがちです。
そうならないためにも、ご自分で簡単なチェックリストを作って、
1つずつ確認していきながらその都度不明な点をメモしていくことをおすすめします。
ハウスメーカーに施工を依頼して、担当の営業マンがいる場合は、
その方に契約書の内容を説明してもらうようにしましょう。
私がハウスメーカーの営業マンをしていた時の経験からいうと、
全部の契約書をお客様に渡して
「中身を読んでおいてください」と丸投げしてしまう営業マンは言語道断です。
注文住宅の契約は、
お客様と工事を請け負う会社との間で交わす重要な取り決めなのですから、
契約内容を決めた会社がお客様側だけに負担を強いるのは間違っています。
ハウスメーカーに注文住宅を依頼する場合は、
ぜひ営業マンに契約内容を説明してもらうことをおすすめします。
工事見積書の基本的な見方
まず、工事見積書を見るときの注意点として覚えておいていただきたい点は、
決まったフォーマットはないということです。
項目の内容を1つずつ丁寧に書いてある見積書を提示する会社があるかと思えば、
「~一式」という記述で関連する工事をひとまとめにしてある会社もあるなど、
同じ工事見積書でも統一感がありません。
費用が安く簡単な工事であれば、
「~一式」と書いてあっても内容が想像できる場合がありますが、
基本的に「~一式」という書き方は見積書をブラックボックス化しているとも言えます。
手間がかかる費用の高い工事ほど「~一式」が多いと見積書の正確性に欠け、
見る側は提示された見積もり額に不信感を持ってしまうのではないでしょうか。
見積もりを提示した会社側にだます意思はなくても、
もしかしたら本来必要のない金額まで「~一式」のなかに含まれているのではないか?
と、要らぬ勘繰りが働いてしまうものです。
ここでは、見積もり書に書かれている主な用語を解説しながら、
それがどんなことを意味しているのかを見てみましょう。
仮設工事
仮説工事は、住宅を建てる準備を整えるための工事費用です。
施工の準備用ですから、足場やシートの設置、工事の際に使用する電気代など、
建物が完成すればなくなってしまうものに費用が使われます。
具体的に仮設工事の費用の内訳を挙げてみると、以下のようになります。
- 工事現場の足場の組み立て
- 物が飛散するのを防ぐシートの設置
- 電動工具や照明などを使うのに必要な電気を引くための仮設電気工事
- 工事用や道具を洗うのに必要な仮設水道工事
- 施工会社の職人が使う仮設トイレの設置
※これらは、見積もりに占める割合は少なく、金額全体の3~5%前後です。
基礎工事
基礎工事は、住宅を建てる場所の基礎を作る工事費用です。
基礎は住宅の間取りや工法によっても変わりますが、
主なものにはまず、基礎全体を鉄筋コンクリートで固めた「ベタ基礎」があります。
それから断面が逆さのT字型になった点が特徴の「布基礎」があります。
これらに加え、地盤の弱い土地は地盤改良工事をしたあとに長い杭を地面に埋め込み、
その上に住宅を建てる「杭基礎」を使う場合もあります。
工事の内容は、コンクリートの流し込み、鉄筋の配筋、型枠の固定などです。
土地の地盤改良をしない場合であれば、基礎工事が占める費用の割合は、全体の5%程度でしょう。
木工事
木工事は木造住宅の柱や梁などの骨組みを始め、天井、床、外壁、サッシの取り付けまで、
住宅建築の大半を占める作業です。
(ここでは木造住宅を基準に説明をしていますので、コンクリート造の住宅とは内容が異なります)
木工事は、あらかじめ加工され現場に運び込まれた木材を
大工さんが組み立てる作業が中心になります。
したがって、住宅の完成度は大工さんの腕によって左右されると言えるでしょう。
木工事が占める費用の割合は項目のなかでは一番多く、35~40%程度になります。
屋根・板金工事
屋根の工事は木工事の大工さんが行うのではなく、専門の業者が担当します。
屋根工事は日本瓦、ガルバリウム鋼板、スレートなど、
使う屋根材によって金額が変わると考えてください。
屋根・板金工事費は材公共(ざいこうとも)といって、
屋根材の費用と、屋根をふいたり、樋(とい)を設置したりする施工費が一緒になっています。
これは「工事費込み」といった表現と同じです。
屋根・板金工事が占める費用の割合は全体の5%前後でしょう。
外装工事
建物の外装工事には、昔から左官仕上げなどの凝った工事もありますが、
ここでは一般的なサイディングを中心に話を進めます。
サイディングとは、外壁に貼り付けるボード状の外装材で、加工が容易なことと、
さまざまな材質、デザインが選べることから広く普及しています。
外装工事はこのサイディングを壁に貼り付け、防水用のシーリングを施す作業です。
住宅の大きさによっても費用の割合は変わり、外装工事の場合は全体の5%程度です。
金属製建具
建具というのは、窓、ドア、襖(ふすま)、
障子(しょうじ)などの開け閉めができる仕切りのことです。
金属製建具は、文字通り金属製の建具ですから、アルミのサッシや金属製のドアを指します。
これも屋根・板金工事と同様に材工共で表記されることがほとんどです。
見積書を見ると「~か所」と書かれている場合が多いかと思います。
建具は数が多いので、取り付けか所の数で費用が変わるのです。
金属製建具が占める費用の割合は全体の3~4%程度。
ただし、使う建具の商品のグレードや設置場所の数でも費用が大きく変わります。
木製建具
金属製建具に対してこちらは木製の建具です。
襖(ふすま)、障子(しょうじ)、木製のドアなどが木製建具になります。
設置した場所の数と材公共で計算する点は金属製建具と同じです。
費用の占める割合は、住宅で金属製建具をどの程度使うかによって変わります。
ガラス工事
アルミサッシ以外のガラスを使った建具の工事費用です。
ガラスブロックやはめ殺しのガラスなどが工事の対象で、専門の業者が取り付けを行います。
ガラス工事が費用に占める割合は、ガラス工事の場所にもよりますが、全体の2~3%程度でしょう。
タイル・石工事
玄関の床や浴室の壁・床にタイルを貼る作業がタイル工事です。
同じく石工事は玄関ポーチなどに石を貼る場合の工事です。
最近はタイル状の石もありますので、そういった石はタイル屋さんが貼ることもあります。
タイル・石工事の費用は、
タイルや石を貼る施工を行った面積(平方メートル)で計算することがほとんどで、
見積書には施工費と材料費を含む材工共(ざいこうとも)で表記されます。
タイル・石工事が費用に占める割合は、
間取りやタイルを使う場所によって変わりますが、全体の2%程度でしょう。
左官工事
左官工事は内壁と外壁を塗り仕上げにする場合に行う工事のことです。
具体的には、モルタルや漆喰(しっくい)などを、
小手やローラーを使って壁に塗っていく作業がそれに当たります。
費用の請求は材工共で、材料費に加え、
下塗りから仕上げ塗りまでの施工費も含まれ、
塗った面積(平方メートル)で計算されるのが一般的です。
左官工事が費用に占める割合は、内壁・外壁の広さによって決まります。
塗装工事
建物の内側、外側の壁などに塗料を塗ったり吹き付けたりする作業のことです。
この工事には色を付けるだけではなく、耐久性を高める目的もあります。
なお、金属製バルコニーの手すりに使うさび止め塗料、
木製の扉や家具などの仕上げに使うクリアラッカー、
外壁に塗る遮熱塗料などの塗布も塗装工事に含まれますので注意しましょう。
注文住宅の見積書には通常施工費と材料費を含む「材工共(ざいこうとも)」で表記され、
塗った面積(平方メートル)で計算されます。しっかりした見積書には、
重ね塗りの回数なども書かれているはずです。
塗装工事が費用に占める割合は、塗料の使用状況や塗布する面積によって変わります。
内装工事
内装工事は、文字どおり建物の内装に関わる工事ですが、
上で挙げた木工事、左官工事、タイル・石工事などは当然含みません。
主に建物内部の床、壁、天井の仕上げに関わる作業を内装工事と言い、
和室に畳を敷く作業、壁紙・クロス貼り、天井の板張りなどもここに含まれます。
内装工事の見積もりは作業ごとに計算方法が変わるのが特徴で、
たとえば壁紙・クロス貼りなら貼った面積(平方メートル)で計算して材工共で請求、
畳の場合は敷いた畳の枚数で計算されます。
畳には地方によって名称やサイズに違いがあり、
それによっても1枚あたりの費用が変わってきます。
給排水・衛生工事
キッチン、浴室、洗面所などの水まわりで使う給水・排水管を引いたり、
システムキッチンや洗面台を設置したりする工事のことです。
給排水・衛生工事の見積もりは、洗面台やシステムキッチンなどの代金を含むので、
商品のグレードによって金額が大きく変わります。
特にシステムキッチンは高い物になると数百万円を超える商品もありますから、
お金をかけようと思えばいくらでもかけられるのが給排水・衛生工事なのです。
見積もりに占める給排水・衛生工事の割合も、この設置する設備によって変わります。
冷暖房・空調設備工事
冷暖房・空調設備工事は、家電のエアコン、換気扇、換気ダクトの設置などに関連した工事です。
このうちエアコンは電気屋さんや家電量販店から委託された業者などが行います。
冷暖房・空調設備工事が費用に占める割合は、設置するエアコンの値段などによって違うものの、
多くは全体の2~3%程度に収まります。
電気設備工事
電気工事は、住宅の近くにある電柱から引き込み線の取り付け場所までが電力会社の担当、
引き込み線の取り付け場所から屋内の配線までは電気工事店の担当になります。
電気設備工事は屋内に電線を引いたり、電球用ソケットやスイッチを取り付けたりするなど、
家のなかで電気を使えるようにするための工事で、費用に占める割合は全体の2~3%程度です。
ガス工事
ガス工事は、都市ガスとプロパンガスのどちらを使用するかで費用が変わるうえ、
電気中心のオール電化住宅にするか、
あるいはガス中心のオールガス住宅にするかでも大きく違ってきます。
基本的にガス工事は住宅でガスを使えるようにするための工事ですから、
コンロやガス暖房機をつなぐためのガス管・ガス給湯器などの設置を行います。
諸費用
諸費用は上で挙げた項目に該当しない費用です。
会社によって諸費用に含む内容にも違いがあり、
たとえば設計費用や工事管理費、
細かいものになると印紙税などが記されることもあります。
費用全体に占める割合は、諸費用に含む項目しだいで、
多い時には全体の10%程度になることもあります。
見積書の主な項目は以上のとおりです。
これがすべてではないとはいえ、
これらの項目だけでも見積書のほとんどの工事内容がおわかりいただけるのではないでしょうか。
見積もりが複数の会社から上がってきたら、これらの項目をぜひ比較してみてください。
具体的な比較の方法としては、
同じ間取りなら部屋ごとの費用や工事・設備内容を見ると良いでしょう。
そこまで細かく見る余裕がない場合でも、単純に坪単価で比較すれば割高か割安かがわかります。
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▼こちらの記事で「坪単価の計算方法」について詳しく記載しています。▼
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