完成済みの家を購入する建売住宅とは違い、
注文住宅を建てる場合は、建てる前から入念な準備が必要です。
土地探しからハウスメーカー選び、購入資金の算段など、
住宅を建てるにあたって考えることや検討することは数多くあります。
そのためか、人によってはハウスメーカーと契約を結ぶ前の段階で、
1年以上も時間をかける場合があるのです。
注文住宅はお店にふらりと立ち寄って、その場で気軽に購入できる商品ではないだけに、
買う前からじっくりと準備をしたり、調べ物をしたりすることは決して無駄にはなりません。
慎重の上にも慎重を重ね、納得いくまで時間をかけましょう。
ここでは、注文住宅を建てるまでにどのようなステップを踏んでいくのかを大まかにご紹介します。
どのような流れで注文住宅の契約が進んでいくのかをあらかじめ理解できれば、
それに合わせての準備はもちろん、心構えもできることでしょう。
家づくりの大まかなスケジュール
注文住宅を依頼する企業や建物の工法、
間取りなどによってスケジュールの内容は変わりますが、
ここではステップの内容をやや単純化して、家づくりが進行していく様子をご紹介します。
人によって家づくりを決意するきっかけはさまざまだと思います。
たとえば、結婚をして庭つきの広い家が欲しくなったから、
親の土地を相続することになったからなど、
必要に迫られて家づくりを考える場合と、急に家を建てるチャンスに恵まれ、
考えなければならなくなった場合があるでしょう。
後者のように、ご自分の気持ちや取り巻く状況に関係なく、
家のことを考えるタイミングがいきなりやってきた場合は、慌ててしまうのも無理はありません。
これらの場合を別にして、
普段から漠然と家が欲しいと考えているだけでは、なかなか具体的な形にはなりにくいものです。
「いつか欲しい」というやや弱い気持ちを「絶対に欲しい」という強い気持ちにするには、
やはり期限を決めて意識するのが一番です。
そうすることで期限までに何をするかを逆算して考え、
家づくりのロードマップが少しずつ見えてくるようになり、
その結果計画を動かせるようになるのです。
これを読んでいる方で「いつか家が欲しい」と思っている方は
「3年以内に建てる」「35歳の誕生日までに建てる」など、
まずは具体的な目標を持ってみてください。
「~までに注文住宅を建てる」という具体的な目標を定めたら、
次はそのための情報収集です。最初はどんなハウスメーカーがあるのか、
またはハウスメーカー以外にも選択肢があるのか、家づくりの相場、工法の違いなど、
わからないことだらけでしょう。
しかしこれは当然のことです。
焦ることなく、インターネットや書籍などでひたすら情報を集め、
ときには住宅展示場やモデルハウスなどにも足を運んで、疑問を少しずつ解消していけば良いのです。
疑問が解消されて注文住宅に関する知識の輪郭ができてくると、
以前よりも理解できるスピードが早くなりますし、
理解できれば「家を建てたい」という気持ちがさらに強くなることでしょう。
家づくりは土地探しから始まります。
良く知っている住みたい街があるのでしたらそこを選ぶのも良いですし、
仕事場への通いやすさを基準に街を探すのも良いでしょう。
ただ、知名度や人気度だけで街を選ぶのではなく、
交通機関へのアクセスのしやすさや災害に強い場所であるかどうかなど、
ご自分が長く住むのに適した場所かどうかをよく検討することをおすすめします。
特に、各自治体が作っているハザードマップを確認して、台風や地震が来たときに、
そこがどんな影響を受ける土地なのかは、良く調べておいたほうが良いでしょう。
また、その土地に建物を建てる場合の法的な規制はないか、
土地に接する道路の幅員はどのぐらいかなどについても知っておきましょう。
さて、気に入った土地がみつかったら土地の仲介業者と契約を結び、
所有権の移転を行いましょう。
この時点では手付金を払い、
後日残金の支払いが終わると、実際に所有権が移ります。
なお、住みたい家の大きさや間取りのイメージが具体的に決まっている場合は、
それを建てられる広さが必要ですから、土地探しにも制約が加わります。
費用を考えて現実的なサイズの建物を考えましょう。
土地が手に入ったら次は建物について考えましょう。
まずは、家づくりをどの企業に依頼するかを考えます。
選択肢としては、大手ハウスメーカー、地域密着型の工務店、設計事務所の3つです。
それぞれの特徴や違いについては、別の記事で詳しく触れていますので、
そちらをご覧いただくとして、まずは3つの企業の選択肢を先入観なしに見て、
比較することをおすすめします。
本記事内で、依頼先を選ぶ際の参考になるよう、
ハウスメーカー、工務店、設計事務所、それぞれの特徴について記載しています。
依頼する会社が決まったら、
建てたい家の間取りや外観、内装などの希望をその会社に伝えます。
それをもとに会社側から希望を間取りに落とし込んだプランと見積もりが提示されますので、
それをたたき台にしてより良いプランに変えていきましょう。
ここで注意していただきたいのは
「提示されるプランが一発で決まることはほとんどない」ということです。
これはその会社に基本的な提案力がない場合もありますが、
通常、プランというのは、何度も打ち合わせを重ねて、
より良い内容に近づけていくことを前提としています。
打ち合わせを重ねるうちに、当初は考えていなかったような良い案にたどりつくこともありますから、
このやりとりは家づくりにとってクリエイティブで欠かせない作業なのです。
打ち合わせを重ねて、納得のいくプランが出来上がったら、建築工事請負契約を結びます。
契約内容をしっかり確認するのはもちろんのこと、支払う金額や工期についても良く見ておきましょう。
契約が終わるといよいよ住宅の着工に移りますが、その前に地鎮祭と地縄張りを行います。
地鎮祭は工事関係者や近隣にお住まいの方と顔を合わせる大切な機会です。
また、地縄張りによって、敷地内における建物の配置や大きさがわかりますから、
家を建てることへの実感が深まることと思います。
地鎮祭、地縄張りが終わるといよいよ着工です。
なお、敷地が軟弱な地盤の場合は、着工前に地盤改良工事を行います。
上棟とは、木造建築において、建物の一番上にある棟木を取り付けることを言います。
上棟式は工法によって行うタイミングが変わり、
鉄筋コンクリート造の場合はコンクリートの打ち込みが終わった段階、
鉄骨造の建物なら鉄骨の工事が終わった段階を棟上げとする場合がほとんどです。
上棟が終わった段階で、今後の工事の安全を祈願する上棟式という儀式を行います。
この際、家への祝福や職人へのねぎらいの意味を込めて、ご祝儀をふるまうのが一般的です。
工法によって工事の手順は変わりますが、部屋の間仕切りやクロス貼りを始め、
上下水道やガスの配管・電気の配線、キッチンや浴室の設備機器の設置といった工事が次々に行われていきます。
工事が完了(竣工)したら、施主と現場責任者などが立ち合いの元、
建物や機器に不具合がないかの検査と確認をします。
これで問題がなければ家の鍵や書類をもらって、建物の引き渡しは終了です。
以上が家づくりの際にたどる大まかなステップです。
この10のステップの間にも、内装材の色やデザイン決め、
照明や外構の計画など、細かな打ち合わせはたくさんあります。
情報収集の段階を含めると、家が建つまでには1年近くはかかりますから、
焦らずにじっくりと取り組みましょう。
注文住宅の建築を依頼できるのはどんな会社?
すでに記事中に何度も書いていますが、
私は以前ハウスメーカーの営業マンをしていました。
そのため、この記事を読んでいる方が注文住宅を建てるのであれば、
ハウスメーカーをおすすめしたいという気持ちは少なからずあります。
ただ、今はハウスメーカーを辞めて小さな工務店の社長をしておりますので、
私と同じく地域密着型で頑張る工務店や設計事務所にもエールを送りたい気持ちもあるのです。
そのため、このサイトではハウスメーカー以外にも
住宅を建てる方法があることをご紹介することで、
みなさんの家づくりの選択肢を増やしたいと思っています。
選択肢が増えれば建築を依頼する会社間で
メリット・デメリットの比較もできるようになり、
読者の要望によりマッチした会社を探せるのではないかと考えているのです。
その結果、記事を読んでいる方にピッタリ合った会社が選ばれ、
満足のいく住宅が建てられるのなら、これに勝る喜びはありません。
注文住宅を依頼できるたくさんの会社のなかから、
ご自分の理想の住宅を建てられる会社をぜひじっくりと探してみてください。
そのためにも、まずは注文住宅を建てようと思った際に、
どんな依頼先(会社)があるのかをご紹介しましょう。
住宅ハウスメーカー
注文住宅のハウスメーカーには、
TVやインターネットのCMでもよく見かける大和ハウス、積水ハウス、三井ホームなど、
名の知れた会社がずらりとそろっています。
ハウスメーカーに依頼するメリットは、企業規模の大きさからくる、
さまざまなスケールメリットを享受できることです。
たとえば、営業網を生かした土地探し、資材の大量購入によるコストダウン、
資金計画のサポート、各種アフターフォローまで、
大手だからこその手厚いサービスとスケールメリットが受けられます。
また、独自の工法を開発したり、規格化されたデザインプランを持っていたりと、
こだわりを生かしつつ失敗の少ないプランを選べるのもポイントでしょう。
さらに、大手ハウスメーカーは資金に余裕のある企業がほとんどですから、
工事中に資金がショートして会社がつぶれ、
工事が止まってしまうような心配もまずありません。
加えて、住宅展示場で完成イメージに近い住宅モデルを確認できるのも
ハウスメーカーならではでしょう。
ハウスメーカーのなかには、展開する地域を絞った地域密着型の企業もありますので、
そちらとも比較していてください。
- 大企業ならではのスケールメリットと安心感がある
- 住宅の耐震、耐火性能の向上に独自開発した技術と工法が使える
- 規格化された部材を使うので工期が比較的短く、予定にも遅れが少ない
- 工事中、完成後のサービスが充実している
- 注文住宅に使用する部材や規格がある程度決まっているため、選べるプランに制約が多い
- 営業所、協力会社によって対応力に差が出ることがある
住宅工務店
個人・家族が経営する地元密着型の中小企業です。
規模の小さな会社ほど建築士が社長をやっている場合がほとんどで、
打ち合わせ内容がダイレクトに設計に反映されるぶん、プランが進めやすく、
変更があっても素早く対応してもらえます。
工務店はハウスメーカー同様に、設計と施工の両方を請け負いますが、
施工担当は必ずしもその工務店の社員とは限らず、
下請けの業者に依頼することが多いのです。
また、ハウスメーカーのように独自開発の工法はなく、
部材の大量仕入れなどもないため、
材料の仕入れ部分での大幅なコストダウンは期待できず、
見積もりの計算は細かく行う必要があります。
なお、小さな工務店のほとんどは営業マンがいませんから、
ハウスメーカーほどの細かなサポートや
アフターフォローも過度な期待はできません。
そのぶん全体的にコストが安く済むのはメリットでしょう。
私の会社のように元営業マンが社長というパターンも珍しいかもしれません。
工務店に限らず、地元密着型の企業は評判と実績がすべてです。
もしも親子3代で営業している工務店などがあるなら、
実力のある会社と見てまず間違いありません。
- 打ち合わせの内容が設計に反映されやすく、修正対応も早い
- 全体的にコストが安く済む
- 地域での評判や営業年数から実力を判断しやすい
- 中小企業らしい機動力の高さ、きめの細かさを生かしたサポートを受けられる
- 専属の営業マンのいない会社が多く、建築士のスケジュールによっては対応が遅くなることもある
- 少数で運営しているため、立て込んでいると対応が遅くなってしまうことも想定される
注文住宅を手掛ける設計事務所
設計事務所は、建築家が建物の設計と工事管理を行う会社です。
そのためハウスメーカーや工務店よりも建築家の持ち味を出しやすく、
素材や工法にこだわった建築家、モダンなデザインにこだわった建築家など、
さまざまなカラーの設計事務所があります。
建てたい家のデザインに強いこだわりがある、特定の建築家のデザインに惹かれているなど、
施主の希望に合わせてさまざまな設計事務所から依頼先を選べる点はメリットでしょう
(もちろん一般的な住宅にも対応してもらえます)。
ただ、デザインにこだわった設計事務所は、
そのぶん費用が高くなる場合がほとんどなので注意しましょう。
もうひとつ注意点を挙げると、設計事務所は施工を行いませんので
施工会社は別に探す必要があります(設計事務所が探してくれる場合もあります)。
- 選ぶ設計事務所によっては個性的なデザインの住宅が作れる
- 細かい点までこだわりたい人はアイデアを実現させやすい
- 施工会社とは独立している設計者が工事を管理するので、手抜き工事を防げる
- 営業マンがおらず、広告・宣伝に費用をかけないので費用を抑えられる
- 工事費以外に設計・管理料が必要になる
- 設計士のこだわりが強過ぎると、施主の意向に沿わない住宅になってしまうことも
注文住宅を建てるときに、設計・施工を依頼できる会社は主に上記の3種類です。
「会社の規模が違うからできること」が、大企業・中小企業のそれぞれにある点が特徴で、
コストを抑えられる理由にも違いがあります。
どんなサービスを受けたいか、使いたい工法はあるか、コストを重視するかなど、
目的によっても会社を選べますので、じっくり検討してみてください。
会社の選び方としておすすめなのは、最初から1社に絞り込まず、
ハウスメーカー、工務店、設計事務所のそれぞれに話を聞きに行って、相見積もりを取ることです。
同じ規模の会社ごとに最低でも1社、
余裕がある場合は同じ規模で2~3社ずつ合い見積もりを取れれば、
違いがより明確になります。
この際、予算やご自分の家に必要な間取りや広さを伝え、
なるべく同じ条件で見積もりを出してもらいましょう。
それらを比較すれば、それぞれの会社がどういった点に力を入れて
(お金をかけて)住宅を作ろうとしているのかがわかります。
相見積もりを取る主な目的は、
依頼する会社間の値引き競争に拍車を掛けさせるものではなく、
見積もりの数が少ない段階では見えにくい、
適正価格や相場を見極めるためのものです。
見積もりが1社だけでは、提示された金額が適切なものなのかはまずわかりません。
比較のサンプルが多くなるほど、だいたいの相場感がわかるようになるのです。
なお、注文住宅の値段は、部材や設置する機器のグレードや品質も絡んできますので、
安ければ安いほど良いというものではありません。
費用を安くし過ぎて、
建物の完成後にメンテナンス費用がかさんでしまうのでは、本末転倒です。
その点も含めて、相見積もりでどのぐらいの価格が適正なのかを見極めましょう。