ハウスメーカーの営業マンや工務店の担当者と何度も打ち合わせをして決めた間取りでも、
現場に足を運ぶうちに途中で変更をしたくなることがあるかもしれません。
着工後の大きな修正となると追加の工事費を請求される可能性が高くなりますが、
心にもやもやとした気持ちを残したまま工事が進んでいくのを見るというのも辛いものでしょう。
私はハウスメーカーの営業マンとして20年近く現場を見てきた経験があり、
誤解を恐れずに言うと、注文住宅はある種トラブルが起こって当然の産業とも言えます。
これはトラブルが起こりやすい体質の業界であるという意味ではありません。
施主の好みが細かく反映される注文住宅を作る以上、
工程表や設計図で決めたとおりに滞りなく作業が行われることはない、
という前提に立つ必要があるということです。
施主も職人も良い物を作りたいという気持ちは同じです。
ですが、時にはそれがうまく噛み合わないこともあるということなのです。
もしどうしても間取りに修正してほしい点があったら、現場の職人ではなく、
施工を依頼したのが工務店なら現場監督や設計事務所の設計士に、
ハウスメーカーに依頼しているなら営業マンなどにまず伝えましょう。
現場の職人に伝えて直接作業をしてもらうよりも、一端その上の担当者に伝えて、
確認・検討してもらうわけです。
これなら、施主からの変更依頼がうまく伝わっていなかったときでも、
現場で言ったか言わないかで水掛け論に発展しなくて済みます。
複数の現場を掛け持ちしている職人なら、毎日その現場に来るとは限りませんのでなおさらです。
工事中にトラブルが起きてしまった場合は?
家づくりに関して発生するトラブルは、その種類を挙げればきりがありません。
施主と施工者との間で発生するトラブルはもちろん、
施主に関係なく発生するトラブルもあり、
それぞれの発生理由にも多くの種類があります。
施主としては予算を何千万円もかけて作る注文住宅ですから、
そういったトラブルが発生することなく無事に竣工する日を迎えたいと思っておられるでしょう。
現場で発生するトラブルの多くは、施主と工事関係者、
あるいは現場と近隣住民の方との間で
きちんとコミュニケーションや連絡が取れていれば防げることばかりです。
もしも小さなトラブルの種が出て来た場合も、
相手の気持ちを考えて会話をすれば防げることもあります。
たとえば、職人が何かのミスを起こした場合、
そのミス自体は反省をするべきことではありますが、
頭ごなしに攻めないことも必要でしょう。
ミスがあった点について施主として困っていることを冷静に伝え、
フォローをするチャンスを与えてあげることも必要です。
施主としてお金を払っている立場なのに、そこまで気を遣わなければいけないのか、
と思う向きもあるかと思います。
ただ、ご本人が反省をされているなら、その後は気持ちよく働いていただいたほうが
結果的に良い家づくりに繋がります。
職人も自分のミスを挽回しようと一生懸命働いてくれることでしょう。
「施主も職人も、共に良い家を作ろうとしている仲間」
という広い視野でご対応いただけると、良い家づくりに繋がると思います。
営業担当に不満がある場合は、正直に伝えることも大事です
私がハウスメーカーの営業マン時代、特に駆け出しの頃は、
お客様と何度かトラブルになることがありました。
これは私が営業マンを始めて2年目の頃に起きた恥ずかしいトラブルの一例ですが、
1つのケースとしてご紹介します。
そのお客様の注文住宅は、打ち合わせの段階では大きな問題もなく、
無事に間取りが固まって、着工が始まりました。
ところが、打ち合わせの段階で決めたプランに対して、
私が言ったか言わないかでトラブルが発生してしまいました。
そのお客様はプランを決めたあとに、何度か変更と注文を追加されていて、
そのうちのいくつかが抜け落ちていたということでした。
しかし、いくらご説明をしてもなかなか納得していただけず、
このままでは施工にも問題が出そうでしたので、
私は上司に掛け合って、営業担当から外してほしいとお願いしました。
そのときに上司は「お前、本当にここで担当を代えてもいいのか?
担当を代えるのは簡単だが、誠心誠意、たとえ土下座をしてでもお客様に謝って、
担当者としての責任を最後まで全うしろ」と言うのです。
さらに
「ここで現場から逃げてしまったら、今後はお前の成長はないぞ」
と付け加えられました。
私はこのときに言われた言葉を
昨日のことのようにはっきりと思い出せます。
それほど衝撃的な叱責だったのです。
結局、私は上司に叱られたあと、すでに夜8時を回っていましたが、
お断りを入れたうえでお客様のお宅にお伺いし、
最後まで担当をさせてほしいこと、
そして私のせいでトラブルになった点は
すべてこちらで責任を持ちますと伝え、誠心誠意謝りました。
お客様はそれでご納得いただけたようで、
私はその後も担当を続けさせていただくことができたのです。
このように、施主を担当する営業マンに不満や疑問があったら、
本人に直接伝えるか、会社の上司に言うのが良いと思います。
「そういうことを伝えるほうが、かえってトラブルの元になるかもしれない」
と危惧をされるよりも、施主と施工者がお互い正直にフェアに向き合ったほうが
禍根を残さずに家づくりに取り組めるぶん、良い結果に結びつくと思います。
かといって相手を必要以上に責めたり喧嘩腰になったりする必要はありません。
小さなトラブルがあっても、そこから逃げずに問題が小さなうちに対処すれば良いのです。
追加工事の要望がある場合はためらわずに相談をしてみる
注文住宅で着工後に何かしらの変更を加える場合は、
その規模や内容にもよりますが、基本的には追加費用がかかり、工期も延びてしまいます。
しかし、ハウスメーカーの元営業マンの立場から言わせていただくと、
もしも希望する変更点があった場合は、
ぐっと我慢して飲み込んでしまうぐらいなら、思い切って言っていただいたほうが良いです。
施主自身が、途中でこんな要望をぶつけるのはわがままではないかと思っても、
私はわがままで良いと思います。
なぜなら、多少工期がずれても「あの時に修正をお願いしておけばよかった」と、
家が完成してから後悔するよりは何倍も良いからです。
施工中の一時のためらいのために、
その後何十年も続く暮らしが台無しになってしまうのなら、
できるかできないかはひとまず置いておいて、まずはご相談いただきたいのです。
正直なところ、追加工事の発生によって工期が大幅にずれると、
ハウスメーカーの営業マンは社内で責められることが多くなります。
ただ、施主はそんなことはあまり考えなくても良いのです。
施主から追加工事のご相談をいただいて、
あまり内容を検討せずに断ってしまう営業マンは、
だいたい社内の事情を考えて自己保身をしているのです。
個人的にはそういった冷酷な営業マンはだめだと考えています。
多少社内で責められても、お客様のために一生懸命働けば信頼の獲得につながり、
それが巡り巡って会社の売り上げにも表れるからです。