せっかく注文住宅を作るなら、あらゆる工夫を取り入れて収納やプライベート空間を充実させたい。
そんな方に、空いたスペースを有効活用できる
「スキップフロア」と「ロフト」の設置をおすすめします。
この記事では、多目的に使用できるロフトやスキップフロアを取り入れるメリットと、
注意すべき点を紹介しています。
家族みんなが快適に住める家づくりをお考えの方に、
少しでもお役に立てれば幸いです。
スキップフロアが選ばれる理由とメリット
注文住宅の間取りについてはいろいろと情報収集をされているかと思いますが、
そのなかでスキップフロアという言葉を見たり聞いたりしたことはあるでしょうか?
スキップフロアとは、半階ぶんだけ高さをずらした階を作り、それらを階段でつないだ家のことです。
半階ぶんの高さをずらすので、1階と2階の間に1.5階(中2階)、
2階と3階の間に2.5階(中3階)が作られるわけです。
厳密に言うと、スキップフロアは1階の真上、2階の真下に作るのではなく、
階段を挟んだ建物の左右で、それぞれの階をずらして作ります。
なぜなら、階を建物の左右に分けないと、
スキップフロアにする部屋の高さが確保できないからです。
そのため、1階とスキップフロアのある中2階までは、
階段にして6~7段程度しか高さに差がありません
(構造によっては差がもっと少ない場合もあります)。
スキップフロアは少し特殊な構造をしていることもあり、注文住宅を建てるときも、
最初から「スキップフロアを作ること」を目的にされる方はあまりいらっしゃいません。
では、どんな場合にスキップフロアを選び、
またそれにはどんなメリットがあるのでしょうか。
ここではスキップフロアの特徴と、選ばれる理由についてご紹介しましょう。
スキップフロアはどんな場合に作られるのか
スキップフロアは、各階を通常の高さの半分近くまでずらして作るわけですが、
その構造を生かせる状況のひとつは、敷地に勾配がある場合です。
たとえば、北側と南側で1.5mの高低差がある敷地があるとしましょう。
ここにビルトインガレージ付きの住宅を作る場合、
土地の低いほうにビルトインガレージを作ると、
高いほうの敷地を掘らなければ床の高さを合わせられません。
そこで、高いほうはそのままにして、
ビルトインガレージとその横にある部屋の高さを半階ぶんずらしてしまうわけです。
これなら、ビルトインガレージの天井を少し低くして、
車の上のデッドスペースを無くすこともできます。
空間の広がりを感じられるスキップフロア
スキップフロアの最大のメリットは、広がりを感じる空間を作れることです。
1階と中2階、中2階と2階は通常の階の半分の高さしかずれがなく、
ほとんどの場合は2つの階が視界に収まります。
2つの階の高さがずれていますから、視線は水平にはなりませんが、
建物の端から端まで2階ぶんの空間(中2階からは上下合わせて3階ぶん)を通して見られるので、
広く感じられるのです。
スキップフロアは、中央に吹き抜けの階段を置いて、
そこを通して各階を行き来するようにしてもいいですし、
段差のある階のつなぎ目(部屋のなか)に階段を作って、
各部屋から直接上っていけるようにしてもいいでしょう。
いずれにしろ階段の作り方しだいで、
スキップフロアの動線の良さを最大限に生かせるようになります。
スキップフロアで狭小住宅の採光や床面積を改善
狭小住宅にスキップフロアを作る場合は、
空間の広がりを感じられるメリットはもちろん、その他にも良い点があります。
まずは、採光の問題を解決できる点です。
狭小住宅の悩みのひとつは、採光をどう確保するかでしょう。
周囲に高い建物がある場合は、
建物の2階以上か天井から採光する場合がほとんどです。
そこで、たとえば南側に大きな開口部を作り、
北側をスキップフロアにして下げることで、光が北側まで斜めに差し込むようになります。
また、高さに制限のある住宅で、
必要な床面積を確保できるのもスキップフロアの魅力です。
狭小住宅はいかに部屋の数と床面積を増やせるかで苦労しますから、
スキップフロアを採用すると間取りの考え方も変わります。
狭小住宅ならではの圧迫感から解放されるのもスキップフロアのメリットのひとつでしょう。
空いたスペースを収納に使える
スキップフロアのある家は階段が増えますので、
階段の下を収納スペースにすることができます。
本来ならデッドスペースになりがちな場所でも、
スキップフロアのある家では有効活用ができるわけです。
スキップフロアにもデメリットはあります
ここまでスキップフロアのメリットをいくつかご紹介しましたが、
もちろんデメリットもあります。
代表的なものをいくつかご紹介しましょう。
そのままではバリアフリー化が難しい
スキップフロアを採用すると階段が増えますので、
住宅のバリアフリー化からは遠くなってしまいます。
そのため、お年寄りのいるご家庭にはおすすめしにくいのが実情です。
しかし、この問題はホームエレベーターを設置すればほとんど解決できます。
▼こちらの記事で「ホームエレベーター」について記載しています。▼
冷暖房の効きにくさには工夫が必要
スキップフロアの住宅の良い点は、部屋全体に一体感がある点です。
しかし、その一方で暖めたり冷やしたりした空気が住宅全体で対流しやすく、
壁の断熱はもちろん、十分な空調設備を整えておかないと、
なかなか室内の温度を変えられません。
階段にカーテンをつけたり、吹き抜け部分にシーリングファンをつけたりするなどして、
空気の流れをコントロールするのも良いでしょう。
家を建てる際の建築費用が増える
スキップフロアのある住宅は、通常の建物よりも施工が難しく、
必要な材料も増えます。そのぶん建築費用が多少高くなります。
複数のメリットがないとデザインに飽きてしまう
スキップフロアのある住宅は、
通常の住宅と比べると住んでいる人の目線が大きく変わりますので、非常に新鮮です。
しかし、長く住み続けているとその新鮮さも失われていきます。
それはスキップフロアのある住宅に限ったことではないのですが、
新鮮さが失われたときに、採光が優れている、
床面積が増えるなどのほかのメリットも感じられないと飽きてしまうかもしれません。
スキップフロアのある住宅は、それ自体が巨大なワンルームのようで、
家族の気配やつながりを感じやすい家になります。
また、うまく設計すれば、通常の住宅では味わえない
空間の抜け感や広がりを感じられるのもスキップフロアのよいところです。
しかし、採光や動線をよく考えないと、段差が多いだけの不便な家にもなりかねません。
スキップフロアを採用する場合は、
施工会社がどの程度スキップフロアの家を手掛けた実績があるのかを
確認しておいたほうがよいでしょう。
空き空間を有効活用するロフトの作り方
普段使用しない物を収納するために使われる場所といえば、
押し入れや屋根裏部屋、ロフトが挙げられます。
このうち、ロフトには
「天井までの高さが1.4m以下で、設置する場所の下の床面積(2階の上に設置するなら2階の床面積)が2分の1以下なら、床面積に含まれない」
という大きなメリットがあるのをご存じでしょうか。
ロフトは天井の高さが最高でも1.4m程度ですから、
大人が立って歩きまわるには低過ぎます。
しかし、かがんで通るには十分な高さですし、座って本を読んだり、
寝転がったりするのには何ら問題がありません。
そのため、ロフトを収納スペースとして使うのはもちろん、
趣味用の屋根裏部屋として活用される方も多くいらっしゃいます。
このように、アイデアしだいで家の空き空間を有効活用できる
ロフトの作り方と注意点についてご紹介しましょう。
ロフトを作る場所と用途の違い
まず、ロフトと屋根裏部屋の違いを見ておきましょう。
ロフトと屋根裏部屋は同じような意味合いで使われることが多くあります。
しかし、基本的にロフトは
「天井が高い部屋の上部に作られる、壁に囲まれていいない空間」
を指すことがほとんどです。
収納力で言えば、天井裏収納もロフトには負けない便利な場所ですが、
各階の天井の上に作ることや、
昇り降りには天井の扉から引き出した折り畳み式のハシゴを使うこともあって、
荷物の出し入れが困難になることもあるのです。
たとえば、1階の天井下にロフトを作り、そこに荷物を収納するとしましょう。
この際、1階からロフトへは、ロフトの端に備え付けられたハシゴを作ります。
ロフト自体は周囲が完全に壁に囲まれていないために、収納もしやすいのが特徴です。
これが屋根裏収納になると、天井の扉を通り抜けられないような大きさのものは運び込めません。
こういった制約があると屋根裏部屋の使い勝手は悪くなってしまいます。
ただし、物を運びにくい天井裏でも、大きなものでなければ箱運び込めますし、
趣味の部屋として使うなら問題はありません。
用途の違いによって、ロフトと天井裏をうまく使い分けましょう。
ロフトをどんな場所に作るか
ロフトは「住宅の空きスペースの有効活用」という視点から導入を検討される場合がほとんどです。
間取りを検討している時にロフトの導入を考える方は、
何か明確な使用目的がある場合でしょう。
では、実際にロフトはどんな場所に作られているのか、
いくつか例をご紹介します。
部屋の天井の上
ロフトが作られる場所として最もオーソドックスなパターンは天井の上です。
普段目につきにくい場所、なおかつ本来ならあまり使われない場所を有効活用できるので、
天井の上は良く選ばれます。
吹き抜けの上
たとえば2階建ての住宅で、1階に吹き抜けのリビングを作った場合、
吹き抜けの天井の上にロフトを作ることがあります。
このようなスペースは、本来デッドスペースになってしまいますから、これも有効活用の良い例でしょう。
スキップフロアの途中
スキップフロアのある家は、その段差と空いた空間を生かして、途中にロフトを作ることができます。階段からロフトにアクセスできるので、天井の上に作るよりも物の出し入れは容易です。
リビングの上・リビングにつながる部屋の上
平屋の場合、リビングの上はすぐ屋根裏ですから、そこにロフトを作ることで、リビングに個室のような空間を設けることができます。
この際、ロフトには壁ではなくフェンスをつけて、リビングを見下ろせるようにすると、
リビングがより広く見えて開放感が増します。
また、吹き抜けにしたリビングの隣、たとえばダイニングやキッチンの上にロフトを作った場合は、
子供の遊び場にしたり書斎にしたりするのも良いでしょう。
ロフトとリビングがつながることで風通しもよくなり、
ロフトからリビングを見下ろした時の眺めも良くなります。
ロフトは熱がこもりやすい場所
ロフトは住宅のなかでも天井の上や屋根の下など、比較的高い場所に作られますから、
部屋のなかで暖まった空気が集まりやすくなります。
そのためロフトの風通しをよくしないと、
熱がこもって過ごしにくくなってしまうのです。
特に屋根の下にロフトを作った場合は、
窓を設けたり屋根の断熱性能を高めておいたりしないと、
夏場はロフトで過ごせないほど暑くなってしまいます。
空調設備やエアコンなどがないと、昼寝をするのも厳しいほどです。
私が以前ハウスメーカーの営業マンをしていた頃に、
「屋根裏が暗いので、天窓をつけたい」というお客様がいらっしゃいました。
結論を先に言うと、これはあまりおすすめできない例です。
なぜかというと、天窓を通して光が上から入ってきますから、
確かにロフトは明るくなるのですが、狭い空間に光を入れるためか、
明るくなり過ぎてしまうのです。
しかも、光と同時に熱も入り込んできますので、
ロフトの空気が暖まりやすくなってしまいます。
ただでさえ温かい空気が集まりやすいロフトに、天窓からさらに熱を加えると、
どれほど暑くなるかはなんとなく想像していただけるのではないでしょうか。
その結果、このロフトはあまり使われない場所になってしまったそうです。
ただ、勾配天井の下にロフトを作られた別のお客様は、
同じようにトップライト(窓)を作られたのですが、
電動開閉式にしたこともあってか風通しがよくなり、
こちらの場合は非常に喜ばれました。
これはロフトが閉じた空間ではなく、
外の部屋につながっていたことも良かったのだと思います。
ここまで見てきましたように、ロフトは作る場所、
使用目的、作り方、アクセスの方法によって、使い勝手が大きく変わります。
うまく使えば非常に便利な空間になる一方で、
条件が悪いと収納スペースとしてすら使われなくなってしまう可能性があるのです。
ただ単にロフトを作れば便利に使えるわけではなく、
快適に使用するための工夫や対策も必要になりますので、
温度や風通し、ハシゴでの昇り降りについてはよく考えておくことをおすすめします。