キッチンはどんな設備を求めるのかが重要
最近はキッチンを独立させるよりも、
ダイニングまたはリビングダイニングと一体化させて、
広い部屋にするお客様が増えています。
これは部屋をつなげることで家族の気配を感じたり、
小さなお子さんの様子を見たりしながら料理をしたい、
という要望の表れともいえるでしょう。
広い間取りならではの開放感が味わえる点も評価されていると感じます。
キッチンについて間取りプランを練る場合は、
建てる注文住宅の総費用を良く考えたほうが良いと思います。
私は注文住宅の間取りについては、
費用よりもまずはお客様のライフスタイルや間取りに対する要望を重視して
プランを練るようおすすめしています。
それでもキッチンについては、
かかる費用も良く念頭に置いたほうが良いと思います。
といいますのも、注文住宅にかかる費用の割合を見ても、
キッチンは浴室やトイレなどに次いでお金がかかりやすい部屋なのです。
特に費用がかかりやすいシステムキッチンは、
商品にさまざまな機能とグレードが用意されていますから、
あらかじめどんな機能が必要なのかを良く絞り込んでおくことをおすすめします。
たとえば、コンロ1つをとっても、従来のガスを使う方式に加えて、
火を使わないIH式もありますし、オプションでシステムキッチンに食器乾燥機をつけたり、
オーブンレンジを組み込んだりと、費用をかけようと思えばいくらでもかけられるのです。
商品の選び方しだいで、キッチンの予算に100万円以上の差が出ることはよくあります。
もちろん、注文住宅をつくる前から
そういった機能を盛り込むことが前提であったのなら、ぜひ優先してください。
しかし、プランを練っているうちに、
あれもこれもと追加してしまいやすいのがシステムキッチンなのです。
ここはプランの軸がぶれやすいところでもありますから、
しっかりと吟味しましょう。
私の経験上でも、追加工事の一番発生しやすい部屋がキッチンでした。
キッチンとリビング・ダイニングのつなげ方
プランを練るときには、キッチン単体の使いやすさだけではなく、
まずはリビング・ダイニングとのつながりを考えましょう。
これによってキッチンの間取りが変わりますし、
家族のコミュニケーションのしやすさにも違いが出てきます。
それでは、ダイニングとの連携方式が異なる4種類のキッチンをご紹介しましょう。
オープンキッチンタイプ
ダイニングとキッチンをつなげて一体化してしまうタイプです。
キッチンからダイニング、間取りによってはその先のリビングが見えるので、
料理をしながら小さなお子様の様子を見られる安心感があります。
構造上、配膳がしやすいのもポイントでしょう。
ただ、間に壁がないぶん、肉や魚などを焼いた臭いが
そのままリビング・ダイニングに流れていきやすいデメリットがあります。
大手ハウスメーカー営業マン時代のエピソード
調理の臭いに絡んだ一例として、東京都中野区のお客様を担当したときのケースをご紹介しましょう。
このお客様は旦那様が歯科医、奥様が料理研究家をされていました。
奥様は研究家というだけあって料理がたいへんお上手で、
注文住宅の打ち合わせの際にも、
オムレツをはじめとしたおいしい料理を何度かふるまっていただきました。
このお客様からのご依頼は、家を建てるときに
料理教室を兼ねた広いオープンキッチンも作ってほしいという内容でした。
教室に使うぐらいなので、シンクは大きなものを2つ用意、
カウンターは多くの方が集まって調理しやすいようにアイランド型を選ぶなどして、
通常のキッチンの1.5倍以上、広さにして10~12畳はある立派なキッチンを作ったのです。
また、キッチンとダイニングをつなげてほしいとのことでしたので、
そのフロアは奥まで見渡せる広い空間にしました。
ところが、臭いの対策を十分にしていなかったために、
焼き魚や焼肉の臭いが室内に広がりやすくなっていたのです。
肉を焼いたときの臭いは服にも付きやすく、
料理が終わったあとも気になります。
店内が煙で霞んだ焼肉屋さんに行くと、
帰り道に服の臭いが気になることがありますが、
料理教室に来た方もこのような状態になっていたのです。
この点についてお客様からご指摘を受け、
急遽追加工事で透明の下がり壁を作って対処いたしました。
下がり壁というのは、壁の天井側だけを部分的に残した壁のことです。
下がり壁は「ここからは別の部屋です」と空間をやんわり仕切る、
天井まで上った煙を拡散させないなどの効果があります。
壁を透明にしたのは、最初からあった開放感をなるべく無くさないようにするためです。
このお客様のケースは私の失敗例ですが、
臭いの問題はこのような大規模なキッチンでなくても起こりえます。
オープンタイプのキッチンをお考えの場合は、
下がり壁を作ることも含めて、臭いの対策を考えておくとよいでしょう。
クローズド(独立)キッチンタイプ
これはダイニングから中が見えず、キッチンを完全に独立させるタイプです。
キッチンにこもれるので料理に集中できるのと、
料理のときに出る臭いを封じ込めやすいというメリットがあります。
一方でダイニングにいる人の気配を感じにくくなってしまうほか、
配膳に手間がかかるというデメリットもあります。
セミクローズド(半独立)キッチンタイプ
ダイニングとキッチンにつながりを持たせつつも、
壁などで半個室のように独立させるタイプです。
キッチンに扉を付け、開けたときにはダイニングとの一体感を、
閉じたときには独立感を出す方法もあります。
ダイニングにいる人の気配を感じられるオープンタイプと、
料理の臭いが広がりにくいクローズドタイプの良いところを
両方取り入れたタイプといえるでしょう。
センターキッチン
システムキッチンの周りにカベのない、
アイランド型キッチンを使った場合はセンターキッチンタイプがよく選ばれます。
上に吊戸棚がなく、ダイニング全体を見渡せるので、非常に開放感があります。
一方で換気をしっかりしないと、オープンタイプよりも調理の臭いが広がりやすくなります。
せっかく家族のために注文住宅を建てるのですから、
家族のコミュニケーションが取れなければ、
その家づくりはうまくいったとはいいがたいでしょう。
家をつくったことで家族の会話が増えるなら、
家を建ててよかったと思えるはずです。
私もハウスメーカーの営業マン時代には、
お客様にさまざまな提案をさせていただきましたが、
「この提案でお客様のご家族がコミュニケーションを取れるようになるか」は、
自分の提案の良し悪しをセルフチェックするのに欠かせない項目でした。
キッチンも何かと家族の集まる場所です。
プランに悩んだときは、
家族のコミュニケーションが増える場所にする、
というテーマで考えてみてはいかがでしょうか。
キッチンカウンターのレイアウト
次はキッチンカウンターのレイアウトや機能を見ていきましょう。
まずは形や機能で大きく異なるのが、カウンターの配置です。
カウンターの種類によって料理をする人の向き、
配膳のしやすさが大きく変わりますので、
目的に合わせて選んでください。主なレイアウトは下の3種類です。
1)I型(1列型ともいう)カウンターキッチン
コンロやシンクを1直線に並べたシンプルな形状のカウンターで、
上から見るとギリシャ数字のIに見えます。
動線が一直線なので、横の移動が長くなる場合もあります。
2)Ⅱ型(2列型ともいう)カウンターキッチン
コンロとシンクをそれぞれのカウンターに分けたレイアウトが特徴です。
2つのカウンタを上から見るとギリシャ数字のⅡに見えます。
Ⅰ型とは違い、前後に振り向いて作業をすることが多くなります。
3)L字型カウンターキッチン
英語のLの字のように90度に曲がったカウンターです。
L字の2辺を壁につけて配置する場合と、
1辺を壁につけずにダイニングテーブルの代わりにしたり、
シンクや調理台にしたりする場合があります。
4)アイランド型カウンター
コンロやシンクは壁側にまとめ、
カウンター部分のみ壁から独立させて配置するタイプです。
カウンターはテーブル(ダイニングテーブル)を兼ねる場合がほとんどです。
このほかにもU字型(コの字型)カウンターなど、
目的別に選べるいくつかの種類があります。
カウンターのタイプによって動線も変わりますので、
設置したあとのこともよく考えておきましょう。
キッチンは使いやすさを最優先で選ぶ
カウンターと並んでキッチンの使いやすさを左右するのは、
シンク(流し台)、コンロ、そして冷蔵庫の3要素です。
1)システムキッチンの高さの基準になるシンク
システムキッチンの高さはシンクの高さによって決まります。
シンクの高さは料理を良くされる方の身長に合わせて選びましょう。
システムキッチンの高さの目安としてよく言われるのが
「立ったときの肘の位置から10cm程度下」あるいは
「身長を2で割った長さに5cm程度を足した高さ」です。
しかし、これはあくまでも目安なので、
システムキッチンはカタログだけでは決めず、
メーカーのショールームに行って実物を見たほうが良いでしょう。
実際に商品の前に立ってみて、
サイズ感を肌で確認することをおすすめします。
2)コンロは熱源によって調理方法を使い分ける
上でも少し触れましたが、コンロの熱源としては標準的なガスコンロと
IHクッキングヒーターの2つが主流です。
それぞれの専用コンロのほかに、
両方の熱源が使えるハイブリッド型もあります。
ガスコンロのメリットとデメリット
ガスコンロの特徴は、焼き物、炒め物などの
高火力を必要とする調理が短時間で行える点です。
コンロの掃除に手間がかかるというデメリットもあります。
IHクッキングヒーターのメリットとデメリット
IHクッキングヒーターは、弱火でじっくりと長時間煮込むような調理や、
出来上がった料理を保温状態にしておくのに向いています。
火を使わないぶん、ガスコンロよりも安全で掃除がしやすいというメリットがあります。
3)冷蔵庫は容量や機能はもちろん配置が大事
冷蔵庫に関しては性能や容量について考えるのは当然として、
動線を意識してどこに置くかが重要です。
調理をする際には、冷蔵庫を何度も開けることになります。
食材や調味料を取り出してからシンクに運ぶ、
シンクからまな板・電子レンジなどに運ぶなど、
キッチンでは何かと移動が多くなりますから、
効率良く動けるように配置しましょう。