「注文住宅を建てる」というと、建物のほうにばかり目を奪われがちですが、
それと同じぐらい重要なのが敷地と地盤です。
敷地については広さや価格、立地などはもちろんのこと、
陽当たりの良し悪しも含めた周辺環境を知ることが重要です。
さらに、その敷地がどのような地盤の上にあるのかを知っておく必要もあります。
家の土地の状態によっては健康を害する恐れもある
敷地の地盤が悪ければ、
地震で建物が傾く(沈む)などの物理的な影響が出るほか、
水はけが悪い場所では湿気のせいでカビが発生し、
住む人の健康を害する恐れすらあるからです。
最悪の場合は湿気で
家の建物の土台が腐ってしまうことも考えられます。
このように、どんなに立派な家を建てたいと考えていても、
地盤がしっかりしていなければ、まさに砂上の楼閣になってしまうのです。
そうならないためにも、敷地と地盤の特性を良く確認しておきましょう。
地盤を知ることが家づくりの第一歩
私は注文住宅メーカーの営業マン時代から、
敷地についてお客様とやりとりをするときには、
「敷地コミュニケーション」を大事にしてきました。
「敷地コミュニケーション」というのは、
この業界の専門用語ではなく私の造語です。
これは
「お客様と一緒に現地に足を運び、
敷地の状況を読み取りながら、対策を検討する一連のコミュニケーション」
のことをいいます。
敷地の細かい状況は地図や図面を見ただけではほとんどわかりません。
さらに、専門的な知識がないと、その敷地にどのような特徴があるのか、
何に気をつけなければいけないのかもわかりません。
こういった疑問や不安を解消するためにも、
注文住宅建築における地盤調査と敷地コミュニケーションをとおして、
お客様にも必ず敷地の状態をご確認いただいています。
また、実際に現地を見ることで、敷地の陽当たりや周囲の建物が落とす影の長さ、
騒音や道路の交通量の多さなど、家づくりの生活環境もわかります。
家を建てる場合、土地選びは水はけの良さが重要
このように現地に足を運んでわかる情報は多いものの、
土地選びで一番気をつけなければいけないのが、
その土地の水はけの良し悪しです。
水はけは地面ならどこでも同じというわけではなく、
場所によっては悪いどころか反対に水が出てきてしまうことすらあります。
たとえば、地面が砂地であれば水はけは良いですが、
粘土質だと悪くなってしまうわけです。
海抜ゼロメートル地帯の住宅の土地における水はけ事情
以前、東京の江東区にお住まいのお客さまを担当させていただいたときも、
敷地の水はけについては慎重に検討しました。
関東地区以外にお住まいの方はあまりご存知ないかもしれませんが、
江東区は海抜ゼロメートル地帯の一角にあるのです。
東京の海抜ゼロメートル地帯は、23区の湾岸部のほかに、
江東区、江戸川区などの荒川付近も含みます。
これらの地域が海抜よりも低くなってしまった理由はさまざまで、
地区によっても異なります。
たとえば、江東区の荒川付近は、
明治時代から戦後の高度経済成長期にかけておこなわれていた、
地下水のくみ上げによる地盤沈下が主な原因と言われています。
もともと海抜ゼロメートル地帯の多くは土砂が堆積した軟弱な地盤で、
江戸時代の頃までは湿地帯も多くありました。
江東区はそんな地質と歴史のある場所ですから、
他の海抜ゼロメートル地帯と同様に水はけは良くありません。
私が担当したお客様のご要望は、古い3階建てのビルを解体したあとに、
家を建てることでした。
その敷地は裏が水路になっていて、
予想以上に水はけが良くなかったのです。
ビルと住宅では基礎の作りも使う部材も違いますので、
地質の調査を入念に行ったことを覚えています。
地中に「水みち」があるかどうかで変わる土地の水はけの良さ
このような水はけの悪い土地には「水みち」がある場合があります。
「水みち」とは、地中にある水の流れのことで、
透水性の高い場所を水が流れることで作られます。
これが敷地内を通っていると、水はけが悪くなったり、
土や砂が水分を多く含むために湿気が多くなったりします。
湿気をそのままにしておけば建物にカビが発生し、
住んでいる方の健康を害する場合もあるのです。
しかし、水みちは地中にあるため、
地面の表層を見ただけでは敷地内にあるかどうかがほとんどわかりません。
地盤調査の方法
それを調べる方法としては、ドリルのついた鉄の棒を地面にねじ込んで、
地盤の強度を測るサウンディング試験(スウェーデン式サウンディング試験。SS式などとも呼ばれます)などがあります。
サウンディング試験は、依頼する業者にもよりますが、
平均して1か所あたり5~6万円ほどで実施できます。
サウンディング試験のほかにも、
地盤の支持力(強さ)を測る平板載荷試験などもあります。
自分で地盤をチェックする方法
家を建てる土地選びの際、本格的な地盤調査をする前の段階でも、自分である程度地盤について把握しておくことができます。
地名
地名に「田、川、沼、池」などがつく場所は
昔から水に恵まれた地域であったことは想像できます。
ハザードマップ
また、市区町村のハザードマップを見れば、
浸水しやすい地域、土砂崩れが起きやすい地域などを絞り込むこともできます。
雨天時に土地の勾配を確認
また、手軽にできるほかの敷地調査としては、
雨が降った日にその敷地を訪れてみて、
水たまりのでき方や敷地の水の流れを見る方法があります。
これはその敷地に勾配があるかどうか、
あるとすればどちら側に傾いているのかを見ているわけです。
勾配が道路側であれば排水はしやすいですが、
反対側だと水が溜まりやすくなってしまいます。
このような場所では、大雨が降ったときに排水が追いつかず、
雨が止んでも敷地がなかなか乾かないこともあるのです。
雨あがりに土地を見に行く
余裕があれば、雨が上がったあとにどの程度の時間で水がはけるか、
地面は乾きやすいかなどについても見ておくと安心でしょう。
この調査の過程で付近の冠水しやすい道路、
川があるなら水位が上がりやすいかどうかなどもわかります。
雨の日の観察は晴れの日以上に多くの収穫が得られるのです。