注文住宅に限らず、住宅というものはどこでも好き勝手に建てられるわけではありません。
それが法令にのっとって建てられた建築物であることを示すために、
各種の申請書が必要になります。
ここではどんな申請書が必要になるのかを見ていきましょう。
建築確認申請書
まずは新築・増改築を問わず、ほとんどの建物に必要になる建築確認申請書です。
建築主は建築主事を置く行政庁や民間の建築確認検査機関に建築確認申請書を提出して確認を受け、
確認済み証が交付されないと建物を建てることができません。
建築主事というのは、建築基準法に基づいて建物の確認検査などを行う職員のことです。
建築確認申請をするときには、建物の図面などの提出も求められますが、
住宅でも建物の高さや工法によって提出する書類が変わります。
2階建ての木造住宅よりも、
鉄骨造や鉄筋コンクリート造の住宅のほうが構造計算書や各階の梁伏図(はりふせず)など、
提出書類も多くなるのです。
ちなみに梁伏図というのは、建物の梁の状態を真上から見た図で示したもので、
これで軸組がどうなっているのかを確認できます。
それでは、建築確認申請の際にどんな図面を提出するのか、
工法を問わず共通するものを中心に、その一部を見てみましょう。
配置図
配置図とは、敷地と建物の大きさや形、位置関係を表した図のことです。
配置図は北方向を上に、敷地を真上から見た平面図で表され、
建物以外にも庭やガレージ、植栽、敷地に接する道路、敷地内の高低差なども書かれています。
平面図
平面図は、真上から見た各階の間取りを図にしたものです。
部屋の位置関係や大きさ、上下階のつながりなどがこの図からわかります。
立面図(りつめんず)
東西南北の4方向から建物の正面を捕えた姿を、
図として書き起こしたものが立面図です。
この図で建物の形、窓やドアの場所などもわかります。
矩計図(かなばかりず、くけいず)
矩計図とは建物における窓や床、軒、天井などの高さを示すために、
建物の断面図に数値を書き記したものです。
下は建物の基礎から、上は軒先を含む屋根までが断面図で書かれています。
基礎伏図(きそぶせず)
基礎伏図は、建物を一番下で支える基礎部分がどのような形状になっているかを示した図です。
床下換気口の場所や、基礎と土台を固定するアンカーボルトを使う位置もこの図でわかります。
壁量計算書(へきりょうけいさんしょ)
※木造軸組工法の家の場合
木造住宅に使われている耐力壁の量と強さが、
建築基準法で定められた値以上になっているかどうかを見るための図です。
真上から見た図には、各階の壁の場所のみが記され、どこの壁に筋交いが入っているか、
どこに合板が使われているかなどがわかります。
また、地震の揺れや風圧にどこまで耐えられるかを計算し、その最大値も載っています。
構造計算書
構造計算書は、建物にかかるさまざまな力、
たとえば地震や積雪、強風などで建物に荷重がかかった時に、
構造物にどのような応力(力がかかったときに物体の内部に生ずる抵抗力のこと)が発生するのかを計算した書類です。
荷重については、建物の自重によってかかる力、
建物の中にある家具や人の重さによってかかる力なども計算されています。
構造計算書は3階建て以上の建物には必須の書類ですが、
木造の2階建て住宅を建てる場合でも、
計算して数値を示してもらえば安心できるでしょう。
申請に許可が下りたあとも2回の検査が行われる
建築確認申請書に問題がなければ、その後は建物の着工に入ります。
しかし、そのまま竣工まで進んでしまうのではなく、
建物の引き渡しまでには2回の確認検査が行われます。
検査は設計、施工に絡まない第3者が行いますので、不正はありません。
それぞれの検査について内容を見てみましょう。
中間検査
1回目の検査は中間検査と呼ばれます。
中間検査は阪神・淡路大震災で倒壊した建物に、
外から見えない部分の施工不備が多かったことから導入された制度です。
手抜き工事がないか、図面通りの施工が行われているかを、
建物が完成して壁や天井の中が見えなくなる前に検査しようというわけです。
なお、中間検査は3階建て以上の集合住宅が基準ですが、
一般の住宅の検査を義務づける自治体も増えています。
通常、中間検査に必要な申請書は建築士が手配してくれます。
完了検査
建物の竣工後、施主に建物が引き渡される前に行われる最終検査です。
工事が完了すると、
4日以内に「工事完了届」という書類が建築主事などに宛てて提出されます。
建築主事は工事完了届の提出から7日以内に
建物が建築確認申請書のとおりに作られているかどうかを確認し、
問題がなければ検査済証を発行します。
検査済証が発行されて始めて、建物の引き渡しと使用が許可されるのです。
建築確認申請書以外に必要になる申請書とは?
冒頭で住宅を建てるには各種の申請書が必要になると書きました。
ただし、必要になる申請書は、地域や住宅を建てる敷地にかかっている規制によっても異なります。
また、申請書の名前についても自治体によって異なりますので、
ここでは申請書の大まかな種類と概要をいくつか説明しましょう。
住宅用火災警報器設置届
住宅用火災警報器設置届は、火災警報器を住宅に設置したことを
お住まいの地域を担当する消防本部に提出するための書類です。
住宅内で発生した煙や熱を感知して警報を鳴らす火災警報器は、
新築住宅への設置が義務付けられています。
火災警報器と言っても特別な機器ではなく、
家電量販店やホームセンターに行けば1個1万円足らずで購入できますから、
必ず取り付けておきましょう。
雨水や排水に関する申請書
敷地内に降った雨水や、
キッチン・浴室などから出る汚水を公共の下水道に流すために必要になる申請書です。
下水道の処理能力を超える排出を防ぐために水道局が排出量を管理しており、
事前の協議や申請が必要になる場合があります。
狭隘道路(きょうあいどうろ)拡幅申請書
狭隘道路(きょうあいどうろ)とは、幅員が4m以下の道路のことを指します。
「狭隘道路」という言葉の定義は法律上なく、行政が使っている言葉です。
狭隘道路は建築基準法第42条第2項に規定されている道路と同じことから、
2項道路ともよばれています。
なぜ道路の幅について申請が要るのかというと、
建築基準法では建物の敷地は幅員4m以上の道路に接している必要があるため、
2項道路にしか接していない敷地は建築上さまざまな制約を受けてしまうのです。
これを回避するために、
敷地の一部をセットバックして道路の幅員を広げることがあります。
その際に提出するのが狭隘道路拡幅申請書なのです。
風致地区内行為許可申請書
風致地区というのは、都市において緑や水の豊かな自然あふれる地区のことです。
風致地区は自然を守るために樹木の伐採をはじめ、
住宅の建築も制限されています。
そのような制限のある風致地区で住宅を建てる際には、
風致地区内行為許可申請書で住宅の建築を申請する必要があるのです。
ただ、風致地区内での住宅の建築は、
建物の色、高さ、デザインなどに厳しい制約がある場合がほとんどなので注意しましょう。
以上のように、住宅を建てるには関係各所にさまざまな申請書を提出する必要があります。
ほとんどの申請書は建築士が提出してくれますので、お客様は手間もかからず安心です。
とは言っても、申請書の種類によっては別途費用が必要になる場合がありますし、
提出された申請書の内容がわかっていたほうが、
見積書に記載された申請書の名前を見てもピンと来ますから、
覚えておいて損はありません。
ここで土地選びに関して、
元ハウスメーカーの営業マンからひとつアドバイスをさせていただくと、
ハウスメーカーに建築を依頼する場合は、
営業マンがその土地についてどのぐらい調査して理解しているかが大事なポイントです。
住宅を建てようとしている敷地がどんな場所・環境で、そこには建築上、
法的な制約が有るのかないのかなど、現場の状況をわかっているほうが、
家を建てるうえで的確なアドバイスを受けられます。
私が営業マネージャーだった頃、部下の営業マンには
「よりよい住宅を建てるための答えは現地に落ちているから、環境をよく調べるように」
とよく言っていました。
テレビで刑事ドラマを観ていると、
刑事が「事件のカギは現場にある」というようなセリフをよく言います。
家づくりもまさにこのセリフのとおりなのです。
建物の図面や現地の地図を見ているだけでは、
その敷地の水はけの良し悪し、
日照時間、風の通り抜け具合、騒音などは絶対にわかりません。
したがって、机にかじりついているばかりで、
現場の情報が少ない現場軽視の営業マンはお客様のためにもなりません。
実際に私がご案内したお客様のなかにも、
複数の会社から私を指名してくれた理由として
「検討中の敷地を一緒に歩いて、ここに玄関を作りましょうとか、
この電柱は邪魔になりそうだから移動させましょう、
と具体的にアドバイスをくれたのはあなただけだったから」
という嬉しいお言葉をいただいたことがありました。
私は特別なことをしたつもりはなかったのですが、
お客様も敷地選びをする際には大きな不安があるものなのです。
本当にこの場所で良いのか、選んだ後に問題は起こらないだろうかなど、
良く知らない場所ほど、そういった不安は大きくなります。
その際に、一緒に現地に足を運んで、
お客様とおなじ目線・立場で考えるのが営業マンの仕事のひとつだと考えています。
申請は依頼した住宅会社の仕事
ここまで、家づくりに必要な申請書類について解説して参りましたが、いかがでしたか?
申請書類を揃えて、各所に提出するのは家づくりを依頼した会社で行うので、
施主が心配する点はありません。
しかし、申請する内容を少しでも把握しておくことで、
土地選び、依頼する業者選び、費用の節約のヒントが見つかるかもしれません。
この記事を参考に、スムーズに理想の家づくりを実現できることを願っております。
住宅会社の選び方から、完成した住宅の引き渡しまで、
家づくりの一連の流れについて解説している記事もございます。
▼こちらの記事で「家づくりの流れ」について記載しています。▼