季節や地域によって気温が大きく変わる日本では、
注文住宅の基本性能だけでは快適な生活を送りづらいのが現状です。
春や秋は比較的過ごしやすいものの、
夏と冬は冷暖房機器をうまく活用しないと健康を害するばかりか、
命に関わる場合すらあります。
夏場に毎年熱中症で亡くなられる方を見ると、
関東地方以南はエアコンが欠かせない環境になっていると感じます。
暖房器具の良し悪しについては、
熱源も含めてお住まいの地域によっても変わりますので、一概には言えません。
北海道と沖縄県では、同じ日本でも平均気温や気候がまったく違いますし、
冬の厳しさも正反対だからです。
ただ、暖房器具のなかにも、
比較的お客様に支持されやすいものもあります。
そのなかからいくつかご紹介しましょう。
導入したお客様全員が絶賛した床暖房の良さ

私はハウスメーカーの営業マン時代に、
神奈川県の湘南地区、東京都の世田谷区を中心とした23区、
埼玉県の大宮周辺などを担当させていただきました。
この範囲に限って言いますと、お客様に大変ご好評いただいた暖房器具は、床暖房でした。
関東地区の一部なので、日本全体で見た場合はわかりませんが、少なくとも関東のこの地域では、
床暖房を支持される方が多かったのです。
私が担当したお客様だけで言うと支持率は100%でした。
なぜそんなに支持されているのかというと、
一番大きな理由は輻射熱(ふくしゃねつ)で部屋を温める方式が身体にやさしいからです。
輻射熱(Radiant Rays)というのは、
太陽の熱と同じ遠赤外線によって直接伝わる熱のことをいいます。
エアコンのように空気を直接温めるのではなく、
物を温めた熱から温かさが伝わってくるのが輻射熱なのです。
床暖房は温かさが床から少しずつ伝わってくる感じが身体に優しく、
エアコンと比べると温かさをより自然に感じられる点に人気が集まっているのでしょう。
注文住宅であればいろいろな場所に床暖房を入れられますから、
よく使うリビングやダイニングだけではなく、
寝室に導入されることをおすすめします。
なぜなら、床暖房は空気が乾燥しないので喉に優しいのと、
部屋がじっくり優しく温まっていくおかげで、
眠りやすいという特徴があるからです。
そのほかの導入場所としては、子供部屋や洗面所(脱衣所)も良いでしょう。
洗面所へ導入すれば、
冬場に部屋の温度差によって起こるヒートショック現象の防止にもつながります。
ヒートショック現象で毎年命を落とされる方もいらっしゃるので、
お年寄りのいる、いないに関わらず、床暖房の導入を検討してみてください。
床暖房は電気式と温水式のどちらを選ぶか
床暖房の方式には、電気式と温水式があります。
これらの詳細な違いについては、別の記事で触れていますのでそちらをご参照いただくとして、
改めて個人的におすすめしたいのは温水式床暖房です。
▼こちらの記事で「床暖房」について詳しく記載しています。▼
私がハウスメーカーの営業マン時代にお客様に納品させていただいたのも、
電気式よりも温水式のほうが多かったと記憶しています。
温水式床暖房は、電気・ガス・灯油などを使ってお湯を沸かし、
そのお湯を床下に敷いたパイプの中を通すことで床から温めていく暖房です。
温水式は電気を使ってお湯を沸かすことも方法のひとつに含まれるため、
電気式床暖房と混同されるかもしれません。
しかし、電気式床暖房はヒーターを内蔵したパネルを電気で温める方式なので、
同じではないのです。
では、なぜ私が温水式床暖房のほうを推すのかというと、
まずはランニングコストの安さが挙げられます。
温水式は料金の安い深夜電力を使ってお湯を沸かしておくこともできるので、
同じ電気を使う方式でもこの部分に差が出てきます。
あとは、温水式は湧いているお湯を使いますから、
スイッチを入れてから暖まるまでが早いのも優れた点でしょう。
さらに、お湯が熱源だと温度が高く冷めにくい点や、
輻射熱ならではの優しい温め方ができる点も温水式が選ばれる理由です。
照明器具の特徴を把握して快適な照明計画を練る

照明器具は手元や足元を照らすライト本来の使い方だけではなく、
明るさや色、光りの照らし方を変えれば、部屋の雰囲気を変えることにも使えます。
そのためか、照明は国によっても考え方が違うのをご存じでしょうか。
たとえば、日本では蛍光灯をはじめとして、照明に白い光を使うことが多いのです。
駅やスーパー、家電量販店などに行っても、白い光ばかりが使われています。
ところが、外国のたとえば北欧などに行くと、街中では白い光はほとんど見かけません。
ヨーロッパのホテルに泊まった時に、そこで使われている照明を良く見てみると、
蛍光灯の白い光がまったくと言っていいほど使われていないことに気づきます。
このように照明の光に対する考え方が日本とヨーロッパでは大きく異なるのです。
照明器具は毎日使う物ですし、部屋によって用途も異なりますから、
種類と使い方がわかっていると豊かな空間を作れるようになります。
照明の具体的な種類や特徴については別の記事で触れていますので、
ここではどんな点を重視して照明を選べばいいのか、
照明器具の取り付け方法の違いなどについてご紹介しましょう。
▼こちらの記事で「照明器具の選び方」について詳しく記載しています。▼
照明器具を選ぶときは使う部屋のイメージに合わせる
照明器具にはデザインや大きさの大小を含めてさまざまな種類がありますが、
選び方の基本は意外にシンプルです。順番にご紹介しましょう。
照明器具のデザインが部屋のデザインにマッチしているか
照明器具はインテリアの一部ですから、部屋が和室か洋室か、
部屋に置かれた他の家具とデザインがマッチしているかを考えないと、
照明器具だけが浮いた存在になり、部屋にいても違和感を感じるようになります。
わかりやすい例で言うと、和室にシャンデリアがあれば変に思うでしょう。
また、照明器具のデザインが部屋の雰囲気とそれほどずれていない場合でも、
色が合っていないとやはり浮いてしまいます。
たとえば、部屋に置く家具の色をモノトーンに統一して絞り込み、
そこに刺し色として部分的に強い色の壁紙を使うような演出はあります。
しかし、うまく計画しないとこれもチグハグな印象を与えるだけになってしまいます。
したがって、最初はあまり奇抜ではないデザインの照明器具から選び、
部屋のインテリアとの関連性を見ながら少しずつ手を入れていくと、
部屋を育てるような楽しみが味わえます。
色やデザインにテーマを設けて、
それに合った器具や家具をそろえていきましょう。
照明器具にかけるコストはメリハリをつける
コストに関しては、必要な照明器具の値段によっても変わりますので、
これという目安があるわけではありません。
ただ、実際に照明器具を買う段になると、
取り付ける照明の数が多いことに気づくでしょう。
自分で取り付けるシーリングライトなどの照明器具を除き、
天井埋め込み式のダウンライトや外構用のライトまで含めると、
照明器具だけで何十万円、施工費用も足すと100万円を超える場合もあります。
そのため、照明器具はコストをかける部分にメリハリをつけたほうがよいでしょう。
たとえば、キッチンの照明は、よほど凝ったキッチンでないなら、
照明器具はシーリングライトや蛍光灯で十分ですし、
補助的にペンダントライトを使うだけでも雰囲気は変えられます。
もちろん、間接照明やダウンライト、スポットライトなど、
キッチンの照明にコストをかけるのも問題はありません。
そのほか、長い時間使用しないトイレはダウンライトで十分かもしれませんし、
反対にデザイン性に優れたライトを壁に作ったり内装に凝ったりするなど、
トイレを本格的な落ち着いた空間に仕上げるのも良いでしょう。
また、リビングや寝室は昼間と夜で照明の色や明るさを変えると雰囲気も大きく変えられます。
特にリビングは接客にも使われる部屋ですから、
デザイン性に優れた照明器具を使えば、
お客様にも見た目で楽しんでいただけるはずです。
電力使用量が低くランプの寿命が長い商品を選ぶ
照明器具は夕方から夜間に使うものですが、部屋によってその使用時間は異なります。
1日を通して使われることの多いリビングは、照明器具を使う時間も長くなりますし、
トイレや廊下は使う時だけライトを灯すわけです。
そのため、よく使う照明器具ほど消費電力が低く寿命も長いLEDに置き換えることをおすすめします。
LED電球を同サイズの白熱灯のダウンライトと比較した場合、
10年間の電気代はLEDのほうが
約10分の1で済むというデータもありますから(LED照明推協議会調べ)、
ランニングコストや電球交換などのメンテナンスの手間も考えると、
LEDのほうがメリットは多いのです。
使用する電球をなるべく汎用品にしてサイズもそろえる
LEDであれば寿命が長いのでその限りではありませんが、
蛍光灯や従来の白熱灯を使用でする場合は、交換の時のことを考えて、
なるべく近所の家電店で入手しやすい規格・サイズを使うことが望ましいです。
電球や蛍光灯はいつ切れるかわかりませんので、
とっさのときにも入手しやすい商品であれば探す手間もかかりません。
その日のうちに購入して交換したいとなればなおさらのことです。
また、サイズがそろっていれば管理もラクですし、
同じサイズをまとめて購入しておけばよいので買う手間もかかりません。
照明器具の取り付け方法の違い
照明器具の大まかな選び方がわかったら、
実際に照明器具がどのように取り付けられるのかを理解しておきましょう。
天井直付けタイプ
天井に設置したソケット(引っかけシーリング)に爪を引っかけて取り付けるタイプの照明器具です。
天井に張り付くようなシーリングライトをはじめ、コードで吊るすペンダントライトなどもこの方法です。
天井埋め込みタイプ
天井の一部を切り抜いて、そこに照明器具を埋め込むタイプです。
ダウンライトや蛍光灯の埋め込み型もこのタイプにあたります。
ダウンライトは天井の高さよりも高い場所(引っ込んだ場所)にありますから、
見た目がすっきりするのも特徴のひとつです。
ただ、そのぶん電球の交換にはやや手間がかかります。
電球の交換回数を減らすためにも、あらかじめ寿命の長いLED電球を使いましょう。
壁取り付けタイプ
壁に取り付ける照明器具はブラケット照明ともいわれます。
ブラケット照明を使うには、電気工事と照明器具の取り付け工事が必要で、一般の方では取り付けられません。
ブラケット照明のなかにはコンセントから電源を取るタイプもあり、
こちらなら業者に工事を依頼しなくても取り付けられます。
その他のタイプ
上記のタイプ以外には、用途の限られたライトがあります。
夜間に廊下や階段の足元を照らすフットライトなどがそれです。
フットライトは電気工事が必要な壁に埋め込むタイプと、
コンセントに差し込んで使える手軽なタイプの2つが主流になっています。
照明器具を便利に使うための配線計画

照明器具の取り付け方がわかったら、次に重要になるのが照明器具の配線計画です。
配線計画というと難しい内容に思えるかもしれませんが、
要はライトをつけたり消したりするスイッチをどこに配置するかという計画です。
電気の配線は業者の方がやってくれますから、
お客様にはどこにどんなスイッチがあったら便利か、
という点を考えていただきたいのです。
たとえば、広い玄関のある家なら、夜間に帰宅した時にすぐに灯りをつけられるよう、
ドアを入ってすぐの場所に玄関ホール用のスイッチがあったほうが便利でしょう。
同じように、階段なら1階と2階でそれぞれ照明をつけたり
消したりできる3路スイッチがあったほうが便利です。
3路スイッチとは、複数の場所から同じ機器に対して
電気のオンオフができるスイッチのことをいいます。
これは、電気をオンオフするための配線が3本で構成されていることからそう呼ばれているのです。
また、先ほどご紹介したフットライトや玄関ドアの外側に付けるライトなどは、
人感センサー付きの商品を選ぶとスイッチの操作が要らず、
また必要な時だけ照らしてくれるので、非常に便利です。