注文住宅の屋根に関しては、普段あまり目につきにくい場所ということもあってか、部屋の間取りや内装などと比べると、どうしても優先度が低くなってしまいがちです。
「屋根は雨風をしっかりしのいでくれさえすればいい」と考えている方も多いように思います。
確かに屋根の役割はそこにありますから、最低限その性能が備わっていなければ困ります。
しかし、台風で瓦が飛ばされていたり、まるでカップラーメンの蓋を剥がすようにガルバリウムの屋根が飛ばされていたりするのをTVのニュースなどで見ると、屋根の大切さがわかりますし、しっかりとした屋根を作らなければという気にもさせられます。
ここでは、注文住宅の屋根について、種類はもちろん、使う部材から考えてみましょう。
屋根の形の違いと特徴
雨風を防ぐことが最大の機能として求められる屋根にも、いくつか形の違いがあります。まずは基本知識として、屋根の形の違いをご紹介しましょう。
切妻屋根(きりづまやね)
尖った三角形の形をした屋根が切妻屋根です。
この屋根は日本の多くの住宅に採用されています。切妻屋根は比較的構造がシンプルで、雨漏りの恐れもほとんどありません。定期的なメンテナンスは必要になりますが、メンテナンスコストが安価で済むのも特徴です。
半切妻屋根(はんきりづまやね)
半切妻腰屋根は、切妻屋根の大棟の端の部分(切妻の”妻”の部分)を斜めにカットして小さな三角形の屋根面が作ってある屋根です。
なぜわざわざそのような形にするのかというと、建築基準法の道路斜線や日影規制を守るために、北側をカットしているからです。
屋根の一部をカットした形が気になる方もいらっしゃるかもしれませんが、これにより2階の天井部分を高く取れるというメリットがあります。
半切妻屋根は、カットした部分が袴(はかま)を掃いた姿にも見えることから、はかま腰屋根ともいわれます。
寄棟屋根(よせむねやね)
寄棟屋根は、一番高い大棟(おおむね)の部分から4方向に傾斜した屋根のことで、四柱(しちゅう)とも呼ばれます。日本では切妻屋根に次いで多く見かける屋根ですが、日本だけではなく外国にもある屋根です。
一番高い部分の大棟から四方に下がり棟があり、切妻屋根よりも構造は複雑です。この大棟と下がり棟の接合部などに比較的雨漏りが発生しやすくなっています。
入母屋屋根(いりもややね)
入母屋屋根は屋根が2段になった構造をしています。
下の部分が寄棟屋根で、その上に切妻屋根が乗せてあるように見えるのがこの屋根の特徴です。2つの屋根を組み合わせているぶん構造は複雑で、メンテナンスもやや手間がかかります。
方形屋根(ほうぎょうやね)
方形屋根は正方形の建物に作られる屋根で、中央の一点に向かって棟が集まるような形をしています。
屋根が四角推ですから、ピラミッドを思い浮かべていただければ形の想像がつきやすいでしょう。方形屋根の作りは寄棟屋根と同じような構造ですが、棟を結ぶ頂点が少ないぶん、こちらのほうが雨漏りはしにくいです。
片流れ屋根(かたながれやね)
片流れ屋根は、切妻屋根を大棟に沿って(中央から)半分に切ったような形で、傾斜が片方にしかありません。
切妻屋根よりもシンプルな構造になっているため、雨漏りが起こる恐れは少なくなっています。
ただ、屋根の上に降った雨が片側の雨どいに集中して流れ、溢れやすいという欠点があります。しかも、軒(のき)のない片流れ屋根の場合は、雨どいからあふれた水が軒先と外壁の間から浸水するなどの例もありますので、注意が必要です。
陸屋根(ろくやね)
陸屋根は平屋根(ひらやね)とも呼ばれ、屋根に傾斜がなく平面状になっているのが特徴です。
平面状といっても完全に水平なわけではなく、屋根の上に降った雨水が排水溝(ルーフドレイン)まで流れていくよう、緩やかな勾配になっています。一般住宅で陸屋根を採用する例としては、豪雪地帯が挙げられます。
これは、勾配のある屋根だと、積もった雪が重さに耐えかねて滑り落ちた際、その下を歩いている人が危険にさらされてしまうからです。
そのため、建物を雪の重みに耐えられる鉄筋コンクリート造などにしたうえで、雪が落ちない陸屋根を使うのです。陸屋根は降った雨が一度上に貯まる構造ということもあり、十分な防水処理が必要です。
招き屋根(まねきやね)
招き屋根は、切妻屋根の住宅を大棟に沿って半分に分け、片側を垂直方向に上げた状態でつなげ直した形の屋根です。
片側が垂直に上がったぶん、高さがずれていますから、屋根の傾斜は高い方と低い方ともに片側方向にしかありません。
建物の高い方は低い方の屋根との間に窓を作ることができ、高い方を屋根裏部屋やロフトにすると、通気性の良い部屋にすることができるというメリットがあります。
その一方で、建物の構造が複雑になるぶん、接合部からの雨漏りが起こりやすくなってしまいます。
越し屋根(こしやね)
越し屋根は、主に建物上部からの採光や通風のために作られる小さな屋根のことです。
大棟の中央部分などに作られることがほとんどで、採光・通風用の穴に雨が入らないよう防ぐのが目的です。
屋根はこれらのほかにも、工場などで見かけるノコギリの歯のような形をした「ノコギリ屋根」や、蝶が羽ばたいているような(あるいは本を開いたような)形をした「バタフライ型屋根」などもありますが、住宅用としては一般的ではないことから、ここでは紹介を省きます。
基本的に屋根は構造がシンプルなほど建築コストが安く済み、メンテナンスもラクです。さらに、シンプルな屋根のほうが雨漏りの起こるリスクも減ります。
そういう意味では上で挙げた屋根の中でいうと、切妻屋根、寄棟屋根、方形屋根、片流れ屋根はおすすめです。
屋根に使われる屋根材の種類
屋根の形の違いをご理解いただいたところで、次はその屋根を葺くための屋根材の違いを見てみましょう。
瓦屋根
和風建築に欠かせない、日本に古くからある屋根材です。瓦の特徴はなんといっても耐久性に優れている点です。
土を焼いて作る日本瓦は、30~50年ぐらいの使用は当たり前で、なかには100年近く使われている場合もあります。
セメントで作られたセメント瓦でも、再塗装などのメンテナンスを行えば30~40年程度は使用可能です。
瓦のデメリットは、1枚あたりが重く、全体に葺いた時に屋根の重量が増してしまうことから、住宅の耐震性を高める必要がある点です。
また、台風の時には、他の屋根材よりも飛ばされやすい(剥がされやすい)点にも注意が必要でしょう。
屋根材のなかではコストが一番高いこともデメリットとして挙げられます。
スレート屋根
スレートは屋根材のなかで最もコストが安いためか、現在日本の住宅で一番採用されています。
この屋根材は薄い板状をしていて、重ね合わせながら貼り付けることで屋根を葺きます。スレートには粘版岩を薄い板状に加工した天然スレートと、セメントに石綿などを混ぜて加工した化粧スレートの2種類があります。
天然スレートは岩を加工して作った屋根材であることから、割れやすく重量もあり、また化粧スレートよりも高価で、ほとんど使われることはありません。
一方、化粧スレートは人工の屋根材のために安価で品質にばらつきがなく、また軽量で薄く運搬も容易であるため、多くの住宅で使用されています。
スレートのデメリットは、薄いために割れやすいことです。また、寿命は25年程度といわれており、10年程度でメンテナンスが必要になります。
トタン屋根
トタンは鉄板に亜鉛のメッキを施した屋根材です。屋根材のなかではスレートに次いでコストが安く済むものの、10年程度で再塗装が必要になるなど、耐久性は弱めです。
鉄板に塗装を施しただけなので、塗装のはがれたところから鉄板がさびてしまうと、耐久性がさらに下がってしまいます。また、強い雨が降ると雨粒がトタンを叩きつける音が気になるのもデメリットといえるでしょう。
ガルバリウム屋根
ガルバリウムはトタンと同じく金属系の屋根材ですが、こちらはアルミニウムや亜鉛などからなるアルミ亜鉛合金を鋼板にメッキし、複数種の樹脂を塗装した屋根材です。
この屋根材の特徴は軽量で錆(さび)に強い点。
デメリットは、それ単体での使用では断熱性や防音性が弱いため、それを補う施工が必要になる点です。
銅板屋根
銅板屋根は、文字通り銅板を葺いた屋根のことです。
屋根材のなかでは非常に高価なために、一般の住宅で使われるケースはまれですが、神社や仏閣などでは多く使われています。
銅板のメリットは、塗装などのメンテナンスが不要で、50~60年近くは使える高い耐久性がある点です。
価格が高い以外のデメリットとしては、表面の強度が弱く、何かがぶつかるとへこみやすい点が挙げられます。
屋根材には使用できる勾配が決められている
ここまで屋根と屋根材の種類を順番に見てきました。
日本の住宅の屋根は、上記の屋根との形と屋根材の組み合わせで出来ているわけですが、屋根の勾配によっては使えない屋根材もあります。
たとえば、トタンやガルバリウムなどの金属製の屋根材は、ほとんどの勾配で使用できます。一方、瓦屋根は4寸勾配以上でないと使用できません。
4寸勾配というのは10寸の長さの間に、4寸ぶんの高さが増える勾配のことです。尺貫法が使われていた時代に決められた勾配なので寸という単位を使っていますが、比率で言うなら10mの距離で4m上がる勾配と同じになります。
瓦が4寸勾配でないと使えない理由は、瓦は重ね合わせて使う屋根材のために、勾配が緩いと雨水が隙間から入りやすくなってしまうからです。
屋根材は屋根の勾配によって選択肢が変わるとはいえ、価格はもちろんのこと、メンテナンスにかかる手間やコスト、耐久性なども考慮に入れ、バランスを考えて選びましょう。